すでにOMO事業は動き出しており、2021年11月には、ECで購入した商品をQRコード認証でロッカーから受け取れる「スマートショーケース」をリリース。自動調理用ロボットの開発にも着手している。
今回調達した資金は、root Cの拡大と、新たな開発体制の構築などに使用していくという。山田は現在の市場環境について次のように語る。
「お金が集まる企業と、そうでないところの差が出始めていると思います。売り上げが立っているところには資金が入る。われわれは、BtoBのDX支援事業で売り上げが出ているので、そこで会社としての強さを持っていると評価してもらえているのではないでしょうか」
ハードを持つことの意味
事実、スタートアップ冬の時代と囁かれるいま、シリーズAで54億円は大型調達だ。しかし、root Cなど「モノ」を抱えて事業を展開していくのは、資金面からすると容易いことではない。ソフトだけでなく、ハード(モノ)も持つことの意味を中尾と山田はどう考えているのだろうか。中尾は、顧客への提供価値を高めていくうえで、ハードの存在は欠かせないと考えている。
「アプリでの席予約や決済の省力化を提供するソフトウェアでの事業は、すでにレッドオーシャンです。一定のパイを取らなければビジネスが成り立たず、後発には厳しい。
ただ、いま世間に存在するソフトウェアは、顧客に対して10の価値提供をしているときにコストが7であれば、それを6や5に減らしましょうというものです。僕らは、それにハードを兼ね備えることで、10の価値提供量を20にも30にもしていこうと考えています」
例えば、調理ロボットであれば、飲食店の調理工程をすべてトラッキング(追跡)することで省人化しながらも味を担保することができる。そこに利用者から集めた味や提供スピードについての評価を掛け合わせれば、ソフトで得たデータに基づいたハードの改善が可能になるというわけだ。「堅牢な足場に、堅牢なお城を建てたい。ソフトオンリーでは、足場にもろさが出るのではないか」と中尾はいう。
実際に、飲食や小売事業者などのパートナーとなり、業務効率化のコンサルティングや調理ロボット開発に関連する研究を進めている。