消費においても、商品が作られた背景などに共感して購入することが多いと言われています。ただ共感するだけでなく、ミレニアルズなど上の世代と比べて、政治に意見を持ち、グリーンウォッシング(見せかけの環境配慮)といった企業のネガティブな行動にも敏感に反応します。「共感」で行動するからこそ、表層的なものには共感しないし、共感の対象が偽物だったときに厳しい批判をするのです。
そこで、「本物」であることを伝える一つの手法として、歴史、価値観そして企業文化などを物語にできるナラティブが、とても重要になっているのです。
もちろん本物を証明する定量的な事実の開示も必要です。でもそれだけでなく、真実性や信頼性をもつ物語であるナラティブを介すことで、Z世代にオーセンティシティを提示し、深い理解と共感を促すことができます。
裏表のない物語を書く
ナラティブは、企業にとっては消費者への有効なアプローチ手法です。そして投資家の興味を惹きつけ、従業員の心に火を点けるものです。「本物の物語」ですから、さまざまな語り手の視点で、裏表のないことが重要です。例えばマーケティングにおいて気をつけるべきことは、Z世代の消費者視点でどんな物語が共感を得るのか、そこに嘘はないか、という視点。
IRにおいては、顧客への価値創造の観点でどのようなプロセスが自社で行われているのか。ナラティブと、それが真実だと証明できる定量情報は何か、といった視点が重要です。
従業員に対しては、それこそ嘘はつけません。外にだけ良いことを言っていて中に入ったらがっかり……。ということがないよう留意しなければなりません。理想に対して道半ばであれば、それを正直に伝えることで共感を促すこともできるでしょう。
ナラティブとロジックとトラックレコード(実績、歴史)が大事だと、この連載でも以前書きました。企業の推進力を加速する燃料として、ナラティブの活用はさらに広まりそうです。