Z世代は「本物」にこだわる 若い消費者に刺さるナラティブとは

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この連載のキーワードである「ナラティブ」と、「ストーリー」との違いについて、あらためて説明しましょう。どちらも「物語」であり、しばしば同様の意味で使われますが、微妙な違いがあります。

ストーリーとは、主人公が何をして、どうなったか、一連の出来事を順序立ててプロット(脚本)として伝えるものです。一方でナラティブは、同じく一連の出来事ではありますが、それらを通じて何らかの意味や価値観、体験を伝えるものを指します。

アメリカの辞書「Dictionary by Merriam-Webster」で”narrative”を引くと、1つ目の意味は「ストーリーと同じ」ですが、2つ目の意味は次のとおりです。

「特定の視点 (point of view) や価値観 (set of values)を反映し推進するような状況や一連の出来事の提示や理解の仕方」(筆者訳)。そしてこんな例文があります。

「ティーパーティーの台頭とオバマ経済の低迷は、自由を脅かす大きな政府という共和党のナラティブに拍車をかけました。 ──マイケル・グルンワルド」

つまりナラティブは、誰かの視点での主張や価値観を示す表現である点が、ストーリーと異なる特徴です。その「誰か」がメッセージを届けたい相手と近い人物像であれば、ナラティブは物語を通じて、世界観などの深い意味を持たせることもできます。

ナラティブは「本物」を重視するZ世代に響く

では深い意味を伝えられるナラティブが注目されているのはなぜか。実は若い世代の思考や行動が変わってきているからです。

特にZ世代(1990年代後半~2010年代初めの生まれ)にナラティブが刺さります。3月に開催されたアメリカのエンターテインメントイベント「SXSW(サウス・バイ・サウスウェスト)」に参加した友人からこんな話を聞きました。

「SXSWに参加する多くのビジネスマンが、いま、Z世代の動向を注視している」

その理由は、Z世代が次世代の中心的消費者として影響力をもつからだけではありません。Z世代は「共感」によって行動する「共感経済」の実践者です。友人の言葉を借りると、共感する対象のオーセンティシティ、つまり「本物」であることに特に価値を置いているため、注目されているのだといいます。
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文=市川祐子 編集=露原直人

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