そうしたコメントの要点をまとめると、こうだ。「あなたは自分が何を言っているのかわかっていない。これはバイデンの政策だ。ロシアやウクライナとは何の関係もない」。何年も石油精製業で実際に働いてきたくせに、あなたは石油産業のことも石油精製のことも理解していない、と主張する人もいた。
ここでは、ガソリン価格の高騰の原因について深く掘り下げてみようと思う。まずは、2022年の平均ガソリン小売価格の推移を見ていこう(ソースはこちら)。
ガソリン価格の急上昇が始まったのは、2月24日のロシアの侵攻開始から1週間以内だった。その急騰のさなかに、ジョー・バイデン大統領は、原油、液化天然ガス、石炭に関してロシアから米国への輸入を禁じる大統領令に署名した。
この禁止が正しい措置だったか否かについては、議論の余地がある。ただしこの判断が、石油とガソリンの価格に影響を与えたことについては疑いようがない。
もちろん、相関関係は因果関係を意味しない。したがってここからは、ガソリン価格に影響を与えた実際の出来事について論じていこう。
米国が輸入するロシアの石油は、大部分が最終製品と中間製品だ。後者は主に、米国の石油精製工場でのディーゼル油(軽油)製造に用いられていた。ディーゼル油には毎年2回、需要が高まる時期がある。農家の作付けの季節にあたる春と、収穫期の秋だ。
したがって2022年には、需要が高まる時期の直前に業界が混乱し、ディーゼル油製造に影響を与えたということになる。さらに、パンデミックによって長らく我慢していた人々が大挙して旅行を始めたことから、ジェット燃料の需要が極端に高まった時期でもあった(ジェット燃料も、ディーゼル油と同じく「留分」だ)。
これにより、2022年に「留分」の価格がいっそう高騰し、業者は対応を迫られた。だが、石油精製業者が留分生産へ移行したのに伴って、ガソリン生産の一部が犠牲になった。これにより、ちょうどガソリン需要が高まる夏のシーズンに向けて業者が備蓄を増やし始める時期に、ガソリン生産にマイナスの影響が及んだ。