そしてもう1つの大きな出来事は、バイデン大統領が、3月末に価格上昇を抑える手段として、戦略石油備蓄(SPR)から前例のない量の石油を放出すると決断したことだ。筆者はこの措置に反対した。というのも、価格の高騰は、SPRによって防ぐべき類の緊急事態ではないと考えていたからだ。
SPRを放出すべき緊急事態とは、輸入石油がもっと大幅に減り、不足に陥るおそれがある場合だ。2022年はそのような状況ではなかった。したがって、SPR放出には正当な根拠がないと考えていた。
だが、筆者を批判した人のひとりに言わせれば、「2022年に価格が下がったのは、ひとえに、バイデン大統領が選挙の年にSPRを政治的に利用したからだ」そうだ。確かに、2022年の価格上昇を反転させる効果はあっただろう。しかしその一方で、この放出により、緊急用の石油備蓄という点に関する米国の立場は以前よりも危ういものになった。
こうした動きについて懐疑的になることはたやすい。というのも、価格上昇に対する有権者の動揺をなだめるために、民主党であれ、共和党であれ、政治家たちがSPRを「戦略石油備蓄」ではなく「戦略政治備蓄」として扱うことは珍しくないからだ。
こうしたもろもろの事情が、2022年の歴史的な価格高騰につながった。単一の原因は存在しない。だからこそ、ある人は「バイデンの政策のせいだ」と言い、またある人は「ロシアのウクライナ侵攻のせいだ」と言うのだろう。それはどちらも正しいが、どちらも唯一の原因ではない。ロシアがウクライナに侵攻し、その対応としてバイデン大統領が大統領令を出した。例え多くの人が大統領の判断が正しい措置だったことに同意するとしても、それにより業界に乱れが生じた、ということなのだ。
(forbes.com 原文)