健康

2023.04.06 08:30

「ウェルビーイング」は流行りのバズワードなのか?

鈴木 奈央
人的資本とは、「従業員と従業員の持つ能力・スキル・知識などの価値を生み出すために企業が投資と捉える概念」で、人的資本経営とは、昔から言われる「人を大切にする経営」とも言い換えられ、人が持つ能力を「資本」ととらえて投資の対象とする考え方のことです。

これまでの人事領域では「人的資源」という言葉が主流でした。「人を資源としてとらえ、できるだけ効率よく消費する」という考え方で、人にかかる費用を「コスト」と見なします。一方、人的資本では、「人に投資して能力を磨き高めることが、社会や企業に利益を生む」と考えます。人にかかる費用はより大きな成果を生むための資本であり、投資すべき対象となります。

「人的資本」が注目される理由としては、企業価値の主要な決定因子が有形資産から無形資産に移行してきたというグローバルな潮流が広がる中、競争力の源泉である人材投資が企業の持続的成長に不可欠であることがさまざまなレポートなどによって明らかになってきたことです。

労働は、人生において大きな意味を持つものです。生活するためのみならず、やりがいや生きがいなど、個人がウェルビーイングを実感できるかどうかは、働き方に大きく影響されるといってもよいでしょう。

ウェルビーイングは、持続可能な開発目標を指すSDGsの一部でもあります。『目標3 すべての人に健康と福祉を(Good health and well-being)』に、福祉の意味でウェルビーイングが使われています。

また『目標5 ジェンダー平等を実現しよう』や『目標8 働きがいも経済成長も』も、ウェルビーイングに深くかかわる目標といえます。最近では女性特有の様々な健康課題へのソリューションとしてフェムテックが注目されていますがその根底にあるのは女性のウェルビーイング向上というテーマです。

このように。今後の世界に必要とされるものでありながら、ウェルビーイングは単なる流行りのバズワードでそのうち陳腐化し、いつかまた別の言葉に置き換えられていくに違いないという議論も耳にします。

古代ギリシャの哲学者であるアリストテレスは、人がそれぞれの特質、自分の持ち味、個性、得意なことを存分に発揮しながら生活できる持続的な幸福こそが最高に幸せな状態である、と説いています。

ウェルビーイングという言葉自体が社会にどのくらい定着していくかは正直未知数ですが、自分らしく生きていくことを大事にするという意味においてウェルビーイングという概念が流行りに終わるとは考えにくいでしょう。なぜならそれは、古代ギリシャ時代からずっと続く私たちすべての人にとっての普遍的で最大の生きるテーマにほかならないからです。

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