上場したAnyMind、成長の土台つくった「1社目のM&A」はなぜ成功したか

AnyMindのCEO十河宏輔(撮影=曽川拓哉)

ターニングポイント3 情報の非対称性をなくし、上場延期の懸念を払拭

4期目となる2019年以降も、成長の勢いは止まらなかった。5社のM&Aを行いながら、インフルエンサーマーケティングの新会社設立や、アパレルのD2C事業にも乗り出した。さらに、起業を決意する原体験ともなったインド、そしてドバイにも拠点をつくった。
 
コロナ禍の影響で、海外出張に行けなくなったり対面会議ができなくなったりしたが、対応はあくまでも冷静だった。2020年4月に「先行きが不透明ないま、僕らがやれることはコストを抑えながら生産性を上げていくこと」と全社に向けて発表した。
 
販管費を洗い出し、無駄なものはカット。各国の各事業部の売り上げや営業利益を可視化し、目標値達成に必要なことをデータをもとに意思決定していったという。ただ、十河がコロナ禍以上に懸念していたのは、上場延期による社員のモチベーションの低下だった。
 
2022年、AnyMindは、ロシアによるウクライナ侵攻などがその後の株価に悪影響を与えることを回避するため、上場を2度延期した。十河は、延期を決めた理由や延期による事業成長への影響といった情報を、すべて透明化することで、社員に安心感を与えるよう心がけたという。
 
「中核となる社員には、全社に向けた情報発信とは別に、1on1を実施してコミュニケーションを取りました。僕が持っている情報と同じぐらいの情報量を持たせることで、無駄な心配や懸念を払拭できるだろうと考え、対応していきました」


 
そうした努力を経て、ようやく実現した上場。引き続き先行きは不透明ななか、どのような戦略で事業を成長させていくのか、十河の手腕に期待がかかる。

文=露原直人 撮影=曽川拓哉

タグ:

連載

IPO起業家の 私たちが飛躍した瞬間

ForbesBrandVoice

人気記事