上場したAnyMind、成長の土台つくった「1社目のM&A」はなぜ成功したか

AnyMindのCEO十河宏輔(撮影=曽川拓哉)

ターニングポイント2 シリーズAの資金調達を機にM&Aに乗り出す

東南アジア向けにデジタルマーケティング事業を始めたAnyMind(当時の社名はAdAsia Holdings)は、3年の間に異次元の成長を遂げる。日本を含む10カ国に拠点を設立し、創業から約2年半で社員数は300人超え 。計31億円の資金調達も行った。
 
なかでも、その後の事業成長にポジティブな影響を与えたのがFourM(ウェブメディアやアプリのサイト分析などを展開)へのM&Aだ。
 
「もともとM&Aには挑戦してみたいと思っていました。信頼する投資家からは『グローバルで成功したいならM&Aは不可欠。グーグルにしてもアップルにしてもリクルートにしても、買収によって大きく成長している』とアドバイスされました」
 
背中を押された十河は、FourMのM&Aに、シリーズAで調達した資金を積極的に投入する。
 
だが、スタートアップである以上、仮に買収先の組織運営や事業に失敗すれば、ダメージは量り知れない。にもかかわらず、十河は失敗した場合のプランB、プランCを用意していなかった。いかにもハイリスクに見えるが、十河が買収に踏み切ることができたのはなぜか。理由を次のように話す。
 
「人材の解像度とビジネスの解像度が高かったんです。M&Aの締結前にFourMの創業者と何度も会い、20人ほどいた社員全員の特性をすべて聞き出していました。誰が事業を率いるキーマンなのかも把握していたので、自分が社長になったらどうマネジメントするかも見えていました。
 
そのうえで、ビジネスの解像度、つまり事業が伸びる領域にあるのかどうかを深く理解していれば、うまくいくと信じていました」
 
また、当時先行的にアジアに進出していた、ゲームやEC事業を手掛けるシンガポールの​​Sea Groupや中国のAlibaba Groupを参考にして、「M&Aの戦略や戦術を見よう見まねで実践した」という。
 
結果、2017年の10月にFourMを子会社化し、PMI(買収後の経営統合作業)にも成功。メディアやEC支援ツールのAnyManagerという新サービスもリリースし、1300社が使う重要な事業になった。


 
「第三者のお金を投入しているので、1社目で失敗していたら、その後のM&Aには踏み出せなかったと思うし、いろいろな国への進出もできなかったでしょうね。このM&Aが第2のターニングポイントだったと思います」
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文=露原直人 撮影=曽川拓哉

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