細田氏は中国とチェコとの関係について「ゼマン前大統領らが主導した中国からの投資誘致熱は、口約束や投資実態との格差から失望感が高まりました。コロナ禍での戦狼外交に見られた威圧的な振る舞いもありました。昨年10月のSTEM(社会実証研究所)による世論調査によると、中国との関係を良いと評価した回答が15%、悪いが54%(※2017年12月調査では、良い26%、悪い37%)です。中国による世論戦にもかかわらず、チェコ社会の中国に対する視線が以前より厳しくなっているのです」と説明する。
また、細田氏は、「チェコと中国との二国間貿易は中国の一方的な黒字状態が続いています。チェコは中国から遠く離れ、EU(欧州連合)やNATO(北大西洋条約機構)加盟国でもあり、直接的な軍事的圧力を感じる機会がありません。だから、チェコは、中国の人権侵害や民主主義体制への挑戦を厳しく批判できるのです」と指摘する。
一方、細田氏によれば、チェコ政府による対中政策の見直しや台湾との要人往来に対し、中国が大きな拒否反応を見せなくなっているという。「ペロシ米下院議長の訪台など、台湾への要人往来が常態化したためなのか、習近平政権が融和姿勢に転換したのか、米国以外は眼中にないという大国意識なのか見定める必要があります。チェコの対中外交も、対中批判だけの時期は過ぎ、中国の挑戦を遅延・阻止する政策を具体化する時期にあるでしょう」
昨年末に決まった日本の新しい国家防衛戦略には、チェコやポーランドなどの中・東欧諸国との協力関係の強化が盛り込まれた。細田氏は「初めてチェコの名前が明記された意味は大きい」と指摘する。チェコの産業界は、半導体の安定供給や中国に代わる市場として、台湾や韓国に強い関心を抱いているという。「日本とチェコも、WBCの機会だけにとどまらず、サプライチェーン強化やカーボンニュートラルなどの分野でも協力関係が深まってほしいです」
チェコ下院議会のマルケータ・ペカロヴァーアダモヴァー議長が、25日から台湾を訪問し、蔡総統とも面会した。2020年8月のミロシュ・ビストルチル上院議長に続くチェコ議会大物の訪問で、今回は100人以上の財界関係者も同行する。アダモヴァー議長は蔡総統との間で、WBCの話で盛り上がるのかも知れない。
過去記事はこちら>>