チェコ代表が活躍したWBC、プラハが盛り上がったもう一つの理由

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日本代表(侍ジャパン)が三大会ぶりの優勝を決めた野球のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)。日本で行われた第1次ラウンドで注目を集めたのが、予選大会を勝ち上がったチェコ代表(世界ランク15位)だった。

チェコはプールBでは中国を破ったものの、豪州、韓国、日本に敗れて予選敗退となった。それでも、選手が日本のお菓子を食レポするユーチューブを公開。ロッテの佐々木朗希投手が試合で死球を与えたウィリー・エスカラ内野手にお詫びにお菓子を贈ったエピソードも話題を集め、日本のなかで「チェコ代表ファン」を増やした。

では、チェコではどのくらいWBCが盛り上がっていたのだろうか。プラハに住むチェコ・カレル大の細田尚志講師によれば、旧東欧圏だったチェコでは、米国が発祥の地になっている野球は「ブルジョアのスポーツ」として、日陰者扱いされてきた。冷戦崩壊後も、チェコで人気があるスポーツは、サッカーやアイスホッケー。今回のWBCへの出場も、チェコ社会ではほとんど話題になっていなかったという。

細田氏は「もちろん、チェコ代表が猛練習によってWBCに出場したことで、チェコ社会の一部では、野球への認知度が上がったようです」と語る。プラハ市内の、ビール工房を併設したスポーツバーでは、WBC出場を記念した特製ビールも提供され、人々が大画面を通じてチェコ代表を応援していたという。それでも、細田氏は「残念ながら、社会全体を巻き込んだブームにはなっていません」と語る。

一方、スポーツ観戦とは別に、WBCでのチェコ代表の奮闘ぶりを喜んだ人々がいた。細田氏は「人権意識が高い議員や国際関係研究者、チャイナウォッチャーらが、非常に喜んでいました」と話す。チェコ国内では今、中国に対する認識が厳しくなっているからだ。1次ラウンドが米国、台湾、日本で開かれたことで、「日米台が主催する国際大会」というイメージが広がったことや、チェコ代表が中国代表を破ったことが好感を持たれたからだという。細田氏は3月16日、チェコ上院議会で開かれた台湾関係のシンポジウムに招かれた。細田氏が日本と台湾との関係について講演した際、WBCの話に触れると、会場は大いに沸き立ったという。
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文=牧野愛博

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