管理職にとっては、部下のパフォーマンスを改善するためネガティブなフィードバックをすることも仕事の一部だが、これは誰にとっても悩みの種だ。ただ、悪い評価の伝え方を改善することはできる。
筆者は、ある読者から次のような質問を受けた。「部長の私は、かなり前から働いている部下に対して悪い評価を出さなければいけなくなったのですが、不安です。どのように伝えるのが最善ですか?」
良くないことは必ず対面で伝えるべきという考え方があるが、これは間違いだ。人がこれまでそうしてきたのは、対面だと身ぶりや声のトーンなどの非言語的なコミュニケーションを通して共感を伝えることができ、テキストではできないような人間的な伝え方ができるためだ。
顔の表情は、万国共通の社会的シグナル(合図)であり、対立的な場面でその場の空気を読み取ってうまく切り抜ける上で重要な役割を果たす。人は、ネガティブな情報を受け取ると、不安や恐怖などの感情の中枢である脳内の扁桃体がそれに乗っ取られ、大量のアドレナリンが放出されて、口は乾き、心臓の鼓動は速くなり、危険と闘ったり逃げたりする準備を始める。
だが今は技術の発展により、非同期的な形式であっても、非言語的コミュニケーションと、それによってのみ伝えられる共感を含めることができる。これにより、相手は受け取った情報をしっかりのみ込み、気持ちを整理させたうえで反応できる。
動画メッセージで評価を伝える
ネガティブな評価を伝える際には、Loom(ルーム)などの動画メッセージツールを使って事前に録画した動画を使うとよい。動画を使うことで、顔の表情を見せ、穏やかな声のトーンでメッセージを伝えることができるため、相手に共感を示せるし、言葉をきちんと選ぶこともできる。従業員にとっても、その場で反応する必要がないため、負の感情に扁桃体が乗っ取られずに済む。これは、関係者全員にとってのメリットだ。
この方法で評価を伝えれば、部下はネガティブな情報を処理し、闘争・逃走の衝動を克服するための時間が持てるため、後の面談に、良い質問や、アクション志向の解決策をもって臨むことができる。
不意打ちを受けたり、その場で反論を強いられることを好む人などいない。そうした状況に置かれた部下は、当惑してうまく口が回らなくなり、最終的に、その場で冷静な対応ができなかったことにいら立ちを感じる恐れがある。上司のあなたは、部下が面目を保てるようにすることで配慮の気持ちを示せる。部下は、上司の前で尊厳が傷つけられることを避けられるのだ。