IMFが発表した数字は目を引く。中国の成長率が最も上方修正された。IMFは昨年10月に2023年の実質成長率を4.4%と予想したが、現在は5.2%を見込んでいる。その他のアジアの新興国については小幅な修正となっているが、全体としては堅調な成長を予想している。
IMFのアナリストは日本の経済成長見通しも上方修正し、今年の成長率を前回の1.6%から1.8%に引き上げた。一方で、アジアの他の先進国の見通しは下方修正した。例えば、シンガポールの成長率は昨年10月時点の2.3%から1.5%に、韓国は2.0%から1.7%に下方修正された。アジア全体の実質成長率は4.7%を予想し、昨年10月の4.3%から若干の上昇を見込んでいる。IMFが中国を含めている発展途上のアジア諸国の成長率は前回の4.9%から引き上げられ、5.3%を予想している。
IMFの最新の報告書は、全体を通して楽観的な見通しをゼロコロナ規制が解除された中国の消費復活に結びつけている。報告書の執筆者は、経済が再開されるやいなや高まった中国の旅行需要と、それにともなう個人消費の急増(主にホテル予約、サービス、高級品)を絶えず指摘している。また、アジア諸国の貿易の多くがアジア地域の経済圏で行われていること、中国とその他のアジア地域が貿易や観光で強く結びついていることを指摘し、中国経済の復活の波が広がっていると見ている。
中国の個人消費が急増しているという最近の証拠や、IMFの報告書が指摘する内容に関連するものの有効性に異論を唱える人はほぼいないだろうが、こうした考察は2023年の経済の全体像をとらえられていない。
例えば、中国がゼロコロナ政策を放棄したことにともなうコロナ感染者の増加による経済的な足かせを見逃している。同様に、この明るい見通しは当初の消費急増の持続可能性に関する疑問や、消費急増がほぼ一部に集中し、他の経済分野に及んでいないことを見落としている。また、中国の重要な不動産開発部門を悩ませている問題や、進行中の住宅販売の急減も見落としている。IMFの予測は一般の中国人が財産の大半をつぎこんでいる不動産の価格の下落、そしてこれが超富裕層を除くほとんどの中国人にかなりの警戒心を植え付けていることも考慮していない。