Salesforce Venturesの浅田賢は、22年10月にWillboxが総額7億円を調達したシリーズAラウンドに新規投資家として参画した。なぜ浅田は投資したのか。
浅田:最初の印象は強烈でしたね。2022年の夏に沖縄で行われたスタートアップのカンファレンスで、友人の投資家から面白い起業家がいると神さんのことを聞き、ぜひ紹介をお願いしますと伝えたんです。そしたら、その日の夜にいきなり、空港で待っているからピッチさせてほしいと言われて。
神:既存投資家の方から紹介してくれたことを聞いて、このチャンスを逃してはいけないと思い、浅田さんが東京に帰ってくる便に合わせて羽田に行こうとしたんです。そしたら引かれたんですよね(笑)。
浅田:金曜日深夜の到着でしたからね。さすがに申し訳ないと思ってお断りして、結局、週明けにオンラインで面談したんです。神さんは物流業界での経験が豊富で、業界を変えていくという熱意がすごかった。
神:シリーズAからの数年でどう事業を発展させていくかというお話をしたのですが、浅田さんの「5年後、10年後に物流業界は君たちがいたらどう変わるの?」という質問はすごく印象的でした。目先の利益ではなく、将来に対して投資してくれる人だと感じました。
浅田:こういう質問に対して、ふわっとした答えが返ってくる人と、いろいろなアイデアが出てくる人とがいますが、神さんは後者のタイプでしたね。直近は船での国際物流に力を注いでいますが、すでに空の輸送の準備もしていて、その先のSDGsを見据えた事業までも具体的に描いている。
神:梱包資材のことですね。国際物流では、大型の輸送になると職人さんにオーダーメイドで梱包用の木箱をつくってもらうんです。ただ、海外に到着すると木箱は壊されて、燃やされてしまう。これが世界中の国際物流で行われていることは大きな問題です。そこで僕たちは、輸送した後にバラバラに分解して、また角材として再利用できる木箱の新素材を研究開発しているんです。
浅田:個人的には、日本発でグローバルで戦えるような大きなビジョンをもっている起業家を応援したい。国際物流の業界には、Willbox以外のプレイヤーもいますが、その多くは紙や電話、ファックスで行っていた業務をSaaS化するような、現状プロセスのDX化のプラスアルファにとどまっている。一方で、神さんは業界を根本的に変えようとしている。ハードルは高いですが、インパクトはすごく大きい。
神:国際物流の業界は多重下請け構造で、荷主企業は見積書の取得と精査に膨大な手間をかけている一方、物流事業者は多くの案件を失注しているのが現状です。最上流工程である受発注を僕たちの「Giho」に置き換えることで、この産業構造を変えたい。直近では、23年2月に神戸に拠点を設けて、西日本エリアをカバーしていきます。春先には、大手航空会社と準備を進めている航空輸送のサービスもスタートさせます。さらに、今後2〜3年でアジア地域に広く事業展開していきたい。