ビジネス

2022.12.07

農業最適化で途上国の子供たちが夢に挑戦できる世界へ

投資家 細野尚孝(左) 起業家 坪井俊輔(右)

坪井俊輔は2018年6月、兵庫県丹波市にサグリを設立。同社は、衛星データとAI技術・区画形成技術を組み合わせたデータプラットフォーム事業を展開。主力の「アクタバ」は、これまで行政が目視で確認していた農地の状態をデジタル地図上で閲覧できるサービスで、耕作放棄地の把握やパトロール箇所の割り当て、調査結果の入力などをアプリ単体で完結させられる。これまで約70自治体で導入・実証の実績をもつ。

BIG Impactの細野尚孝は21年6月、運営している「ひょうご神戸スタートアップファンド」を通じてサグリに出資。細野が投資した理由とは。


細野:神戸市さんからのご紹介で、すごく優秀で弁の立つ若手起業家がいるという触れ込みでお会いしたのが最初です。実際、聞いていた通りの人物でしたね。

坪井:神戸市さんと兵庫県さんにはすごくお世話になっていて、恩返しをしたかった。そこで彼らが設立し、細野さんたちが運営しているひょうご神戸スタートアップファンドの第1号案件になりたいと思い、自分から出資の話をもちかけたんです。

細野:僕は話をしてみて面白い人は投資検討するようにしています。大事にしているのは、独自の世界観をもって突き進んでいける起業家なのかどうかという視点。追い風が吹いている市場で勝負しようとする起業家は少なくないですが、坪井さんは農業という難しい領域で、世界規模で革新を起こすことに挑戦していて、率直にいいなと思いました。

人柄もユニークで、すごくマイペースだし、自信をもって物事を話すんですよね。だから、聞いている側も引き込まれるし、彼だったらできそうだなと思える。周りの人を応援したい気持ちにさせるのは、起業家として大きなビジネスに広げていくために重要な力です。

坪井:自覚はありますが、いざ公言されると恥ずかしいですね(笑)。最初の資金調達では、いろんな投資家さんを回ったものの、事業についてばかり聞かれることが多くて、なかなか細野さんのような方には出会えませんでした。

細野:マイペースに関していうと、この取材にも大遅刻してきたほどですからね(笑)。坪井さんらしいなと思いましたよ。遅れる連絡をもらってすぐに「大物やね」って返しました。たぶん、頭のどこかのネジが飛んでいるのでしょうね。でも、新しいものを構築するうえで、そうした大胆さは、ある種の必要な資質だととらえています。

坪井:僕が実現したいのは、農業の最適化。世界的にみても、農業の現場では、まだ経験値に頼っているのが現状です。そして途上国では、子どもたちの多くが学校を卒業した後に農業現場で働いている。アナログ作業をデジタル化することで農業の状況を改善して、子どもたちが将来的に自分の夢に挑戦できる環境をつくりたいんです。

これまでは行政向けにアクタバを提供してきましたが、8月末には新たに農家さん向けの農地管理アプリ「Sagri」をリリースしました。農家さんがわざわざ現場に行かなくても、自分の管理する農地の生育状況の把握や土壌の解析ができるようになるもので、作業の効率化につながります。これをグローバルで展開していきたい。
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文=眞鍋 武 写真=平岩 亨

この記事は 「Forbes JAPAN No.099 2022年11月号(2022/9/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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私がこの起業家に投資した理由

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