アジア

2023.03.14

中国の経済基盤が劇的に縮小 一人っ子政策の影響が顕著に

世界子どもの日を祝う中国の児童(Getty Images)

一層深刻なのは、こうした人口動態が財務的にも重大かつ不利な影響をおよぼすということだ。退職者への年金の支払いは、中央政府だけでなく、地方自治体にもかなりの借り入れを強いることになる。

中国はすでに、米国を含む他の多くの国々より大きな債務を負っている。公共債と民間債を合わせたすべての債務の合計額は約52兆ドル(約7000兆円)に相当し、同国の経済規模の3倍近くに達する勢いで膨らんでいる。確かに、米国は中国より大きな債務を負っているが、それは中国政府が、例えばインフラストラクチャー支出を支えるために必要な借入金を地方自治体に負担させているためだ。年金によってこの負担はさらに増し、これまで中国の発展に大きく貢献してきた成長促進事業が圧迫されることは避けられないだろう。

ところが、こうした悪影響を埋め合わせるために中国政府ができることはほとんどない。政府は数年前、ようやく1人っ子政策に潜む経済的損失に目を覚ました。関連法を撤廃し、複数の子を持つ世帯を容認したのだ。だが、仮に国民がその自由化された環境をすぐに受け入れたとしても、生産年齢人口の相対的な規模に影響がおよぶまでには15~20年かかるだろう。現状では、新たな法律に呼応して、出生率が上昇しているわけでもない。だからといって、中国に移民が殺到して労働人口が増加することも期待できないだろう。それどころか、中国では通常、入国者数より出国者数が上回っている。

この状況を救う道があるとすれば、労働者の生産性を高めることしかない。こうした背景から、中国政府は人工知能(AI)やロボットの開発・導入に舵を切ったのだ。実際に、同国はこの分野で世界を主導する存在になりつつある。ゆくゆくはアルゴリズムやコンピュータ、機械が労働を担うようになり、比較的限られた労働人口でも、中国の生産性は現在より高まることは間違いない。

AIやロボットのおかげで肉体労働の必要性が減ることになれば、これまでより高齢でも労働に従事することができるようになる。ただし、AIができるのはここまでだ。こうした努力によって人口動態の現実がもたらす負荷を軽減することはできても、それを完全に軌道修正することはできず、これまでのような大規模な投資事業の余地は縮小し、中国は成長の鈍化を避けられないだろう。

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

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