米国の対中国「半導体戦争」が激化 日本とオランダが加勢

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米国が中国の半導体製造業に対して続ける「戦争」が、新たな段階に突入した。米政府は昨年、半導体の国内生産を促進する「CHIPS法」を成立させ、中国に対し最初の一打を放った。同法は、半導体メーカーが国内で事業を設立・拡大する際に多額の補助金を提供し、中国への先端半導体と半導体製造装置の輸出を禁止するものだ。そしてこの1カ月間で、対中措置はさらに強化された。

米政府は、バイデン大統領が人工知能(AI)、量子コンピューター、5G、そして先端半導体といった中国のハイテク産業に対する米国からの投資を全面的に禁止する大統領令を間もなく出すことを示唆している。一方、日本とオランダは、米国と足並みをそろえ、中国への半導体や半導体製造装置の輸出を制限することで合意した。

オランダの決定は特に重要だ。オランダは世界で唯一、極端紫外線(EUV)リソグラフィ技術を用いた半導体製造装置を生産している。おそらく、今後も旧式の深紫外線(DUV)リソグラフィ装置の一部を中国に売り続けるだろうが、EUVに関する決定は中国政府の鋭気をくじくものだ。

今回の措置には、単に圧力を強めるだけではない新しい動きもある。これまでの対中輸出制限は人民解放軍との関係が明確な事業を対象としていたが、今回の措置はより全般的なものとなっているようなのだ。ただ中国の場合、商業と軍事を切り分けるのは困難ではある。

効果が出るまでしばらく時間がかかるだろう。日本とオランダは、輸出制限を実施するための法的整理に数カ月かかるとの見解を示しているが、関係企業は即時順守の意向を表明している。影響を受ける企業は、日本ではニコンと東京エレクトロン、オランダではEUVとDUVの半導体製造装置を生産する世界唯一の企業であるASMLだ。同社のピーター・ウェニンク最高経営責任者(CEO)は、同社の売上高の約15%が影響を受けることを認めている。

もちろん、これらの措置が中国を抑止するとは誰も思っていない。ウェニンクは、禁輸措置が中国を減速させるとの見方には同意しつつも、中国にはいずれ自前で機器を作れるだけの技術力があることは確かだと考えている。過去の例を見ると、そもそも中国はその準備を進めていたのだろう。

もし米国、日本、オランダの新たな措置が中国の野心をくじくことができないとすれば、この3カ国を含む他国による最近の措置は、より普遍的なメッセージを中国の指導部に送ることになる。そのメッセージとは、他の国が開放的な貿易政策を取っているのにもかかわらず、中国政府は他国を出し抜く戦略を推し進めてきたことを、貿易相手国がようやく認識したということだ。中国が技術や知的財産の完全な窃盗を含む不公正な貿易慣行を続けていることに、他国は反発している。そしてこれらの措置は何よりも、米国が欧州やアジアの同盟国と共に、かつて中国との経済関係や貿易で取っていた開放的な姿勢を、今や完全に放棄したことを明確に示している。

世界各国が過去に取ってきたアプローチは、中国の発展加速に大きく貢献した。しかし今や、オープンな敵対関係とは言わないまでも、競争関係に移行したことで、中国はこれまでなかった足かせをはめられる。中国政府は、すべてを自分の思い通りにしようと焦るがあまりとってきた行動の明らかな代償を背負っていかなければならない。

forbes.com 原文

翻訳=Akihito Mizukoshi・編集=遠藤宗生

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