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2022.11.08 11:45

半導体業界で勝ち続ける東京エレクトロン。10年先の手を打つ経営

東京エレクトロン代表取締役社長・CEOの河合利樹

東京エレクトロン代表取締役社長・CEOの河合利樹

「今後、デジタル化とグリーン化の両立が社会の共有価値になっていきます。どちらにも半導体は不可欠です。超VUCA時代には、メガトレンドを捉えていることが重要。半導体は技術革新と市場拡大が期待できます」

半導体製造装置世界トップ3の一角を占める東京エレクトロンの売上高が2兆円を突破した(2022年3月期)。前年比で43.2%増。急上昇の要因を問うと、CEOの河合利樹はまず外部環境の変化をあげた。

確かに世界のWFE(ウェーハファブ装置。半導体製造の前工程を担う)市場は2021年の成長率が40%以上と追い風が吹いており、同社がその風に乗ったことは間違いない。

ただその一方で、河合は「わが社の新規装置の売上は約6割増加しており、市場の伸びをアウトパフォームできた」と強調する。表情に自信がみなぎっているのも、好業績が風任せの結果ではないと確信しているからだろう。

実は追い風で不安要素はあった。コロナ禍でサプライチェーンが分断され、世界的な部材不足が発生。調達が思うようにできずに風をつかみ損ねた競合もいたが、東京エレクトロンの対応は早かった。

「コロナの感染拡大が始まってすぐにコロナ対策本部を立ち上げました。対策のひとつが、プロアクティブな調達です。ジャスト・イン・タイムではなく、手配する期間を長めのレンジに変えていきました」

前倒しで調達すれば、在庫が膨らんでコスト増になりかねない。そこで21年9月にコーポレート生産本部を新設。各工場の調達ナレッジを集約するとともに、部材の共有化を進めて在庫の効率化を図った。一手打つときに次の一手も考えておくのが河合流だ。

現在の好業績を生んだ伏線は他にもある。いまでこそ市場に強い追い風が吹いているが、3年前は需要が縮小。2020年3月期は同社も減収減益に陥った。業績が悪化すると、ただちに業績に影響が出ない研究開発費を削りたくなるものだが、河合は研究開発費の増強を続けたのだ。

「装置メーカーとして重要なのは、強いネクストジェネレーションプロダクトを持っているかどうか。市場に何が起きても、結局求められるのは最もハイエンドかつ世界一の性能をもつ装置です。たとえ1年でも研究開発を怠るわけにはいかない」

EUV露光機に接続される塗布現像装置は、現在同社がシェア100%を誇る。パターン倒壊を防止する超臨界洗浄を導入した洗浄装置も引き合いが多い。業績悪化時も研究開発にブレーキをかけなかったからこそ、これらの最先端装置が無事に世に出て、現在の追い風をつかまえることができたわけだ。
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文=村上 敬 写真=苅部太郎

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