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2022.11.08 11:45

半導体業界で勝ち続ける東京エレクトロン。10年先の手を打つ経営


数手先を見て判断するのは10代のころからだ。高校は明治大学付属中野高校。部活は陸上部と迷ったが、ゴルフ部に入部した。当時、推薦で大学に行けるのは4割ほど。大会が中間や期末テストの時期と重ならないゴルフ部なら推薦に影響もなく、大学に行っても続けられると考えた。推薦を勝ち取り明治大学に進み、ゴルフ部の副主将になる。

卒業後は、3歳上の姉がいた東京エレクトロンに入社した。営業畑を歩み、30代でヨーロッパ駐在を経験。海外赴任は、折しも同社の国内と海外の売上が逆転した直後。グローバルで半導体のトレンドを体感した。

「イギリスに赴任したら、ポンド高になってお客様が続々と撤退。アジアに比べ小さなマーケットで頑張りました。帰国後、台湾と韓国の担当になると引き合いの嵐で、欧州のときと違うやり方が必要でした。メガトレンドを捉えつつも、マーケットの大小や文化に合わせてアジャイルに対応する目を養えたと思います」

社長になって6年。長期レンジで先手を打っていく姿勢は変わらない。前期の研究開発費は過去最大の1582億円だったが、新たに設定した中期経営計画ではさらに増強。5年で1兆円を投入すると発表した。

「これまでの研究開発は、1世代が2〜3年として、1〜2世代先まででした。しかし、4世代先、およそ10年先を見てやっています」

人材戦略については、さらに数世代先を見ている。河合が注目するのは、入社数年までの若手社員だ。

「CEOと新入社員は案外、視座が近いんです。私は当然会社の将来を考えますが、新入社員もビジョナリーで10年20年先を見ている。若手の声はサステナブルな経営をするうえで参考になります。マネジャーはもちろん、若い人が将来に期待を持ってチャレンジできる“やる気重視経営”を推進していきたいですね」


かわい・としき◎1963年生まれ。明治大学経営学部卒業後、86年に東京エレクトロン入社。営業部門に携わり、6年間の海外勤務も経験。2010年に執行役員、15年副社長に就任し、16年より現職。大学生時代には体育会ゴルフ部に在籍。

文=村上 敬 写真=苅部太郎

この記事は 「Forbes JAPAN No.097 2022年9月号(2022/7/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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