東北大学未来科学技術共同研究センターの福原幹夫リサーチフェローらによる研究チームは、CNFのなかでも、紙の原料として広く使われている一年草のケナフで作ったものに半導体の特性があることを発見しました。電圧を加えたときに、電流の方向に応じて電気が通じたり通じなかったりするのが半導体です。その特性を活かして、トランジスターをはじめとするさまざまな半導体素子が作られています。それを何億個も集積したものがコンピューターの心臓部であるCPUです。
現在の半導体に使われているシリコンは、天然のシリコンを99.999999999パーセントという高純度に精錬して単結晶化したものです。この結晶は電気を通しませんが、リンやホウ素といった不純物を添加することで半導体になります。つまり、半導体用のシリコンは人工の化合物なのです。これを製造するためには大変なエネルギーとコストがかかります。
それが植物のケナフから作れるとなれば、じつに画期的なことです。ケナフは生長が早く、CO2の吸収率は木の3〜9倍とも言われているスーパー植物です。カーボンニュートラル、易廃棄性、低コストなどなど、数多くのメリットがあります。半導体の地産地消も夢ではありません。
世界では、エレクトロニクスの基材に紙を使用する「ペーパーエレクトロニクス」が注目されています。紙ならではの特性を活かした環境に優しいエレクトロニクスです。これが実用化されたなら、身近な例としては、本に印刷された挿絵がアニメーションしたり、ポスターから音楽が流れたり、壁紙が照明になるといった魔法のような世界が訪れます。
東北大学未来科学技術共同研究センターでは、これに先駆けてCNFに蓄電能力があることも発見しています。そんなペーパーエレクトロニクスによって、社会が大きく変化することでしょう。青々と茂ったエレクトロニクス畑なんて光景も見られるかも。