リアルあべのハルカスには近鉄百貨店、大阪マリオット都ホテル、展望台、そして近鉄と様々な業態が揃っていますので、バーチャルでも「新たなビジネスモデル」の実証実験を始める予定です。
高さ300mの日本一の超高層ビルと周辺の広場をメタバース化するのですから、それだけで相当な規模で、クラスターがこれまで手がけてきた中でも最大級の規模ですが、将来的にはさらに近鉄沿線に広げていくことも構想しています。
ただそうは言っても、簡単に利益が出るわけではなく、近鉄不動産の倉橋社長は、「若者のためにやっている、若手社員が新しい色々なアイデアを出し続けるには挑戦の場が必要だ」という目的も語っています。現にプロジェクト参加希望の社員がたくさんいて、モチベーション高く取り組んでくださっています。
そして、「バーチャルあべのハルカス」でもインキュベーション機能を持つ空間づくりを予定しています。
──街の再現で言うと、バーチャル渋谷が初めで、凄い反響でしたよね。
はい。「バーチャルあべのハルカス」とは異なり、KDDI、渋谷未来デザイン、渋谷区観光協会を中心とした73社による「渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト」で連携して企画・運営されている、渋谷区公認のプラットフォームです。
これまでハロウィーンイベントや音楽ライブ、サッカー日本代表戦のパブリックビューイングといったイベントが開催されてきました。
また、別の商業面でいうと、都市連動型メタバースを掲げ、景観の再現性・改変や実在都市との連携・商流などの整理に取り組む中で、「広告」の扱いについても様々な観点で検討されています。
「コミュニティづくり」の秘訣は?
──経済圏構築のカギとなるコミュニティづくりについて、クリエイターエコノミーの確立を目指すという「cluster」ではクリエイターとユーザー、上級者・ベテランと初心者が一緒に楽しむ世界が成立している印象があります。秘訣は?まずインターネットの特性として、クリエイターとユーザーなどといった垣根は、技術革新により色々なことが簡単にできるようになるので、次第に下がっていって、いずれなくなります。YouTubeとTikTokを見てもそうですよね。
メタバース、「cluster」については、今は過渡期です。
ワールドやアバター、アクセサリーなどを作るのに、今はまだ主にパソコンを使っている人が多いですが、スマホだけで作れるように、どんどんハードルを下げています。これも僕たちだけの取り組みではなくて、世界的にもそういった方向で、ユーザーもそのプロセスを体感してくれていると思います。
──その過程でストアが盛り上がってくると、売り手と買い手という関係性も生まれます。
「cluster」の場合、一攫千金的な、ボロ儲けするという世界観ではないんです。
儲かるよ、といって人を集めていくと、あまり良くないですよね。なんでもそうですが、そういうコミュニティになってしまいますから。それよりも「作ってよかったな」「買ってよかったな」と思える、感謝の気持ちが巡るコミュニティ作りが、クリエイターエコシステムの肝だと思っています。