ポッドキャスト、日本でこれまで普及しなかった理由と今後の可能性

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2月28日に公開された「ポッドキャスト国内利用実態調査2022」によると、日本のポッドキャスト利用率*1は15.7%で、推計ユーザー数は1680万⼈*2なのだという。

この調査は、オトナルと朝日新聞社が共同で2020年から年1回、男女1万人(15歳から69歳、20年・21年調査では20歳から69歳)を対象に行っているもので、20年調査では14.2%、21年調査では14.4%という結果だった。

日本でのポッドキャストの普及はこの位で落ち着くということになるのだろうか──。

*1)月に1回以上ポッドキャストを聴く人の割合
*2)15歳から69歳の各年齢層の⼈⼝とインターネット利⽤率から推定
オトナル・朝日新聞社「PODCAST REPORT IN JAPAN ポッドキャスト国内利用実態調査2022」

あらためて「ポッドキャスト(Podcast)」とは、アップル社が過去販売していた携帯音楽プレイヤーの「iPod」と放送を意味する「ブロードキャスト(Broadcast)」を組み合わせた造語で、音楽や音声番組などをスマホや専用デバイス、パソコンで通信を介して、あるいはダウンロードして聴くことができるコンテンツ配信サービスである。

筆者はここ3年間、日米間をほぼ隔月に往復しているが、この間ポッドキャストが米国の生活シーンに急激に浸透したことを身近に感じてきた。

数年前まで多くの米国人が車の運転中やジムでの運動中などに「ながら聴取」するコンテンツは、ラジオ放送とデジタル・プレイヤーに収録した音楽が中心だった。それが今では、サブスク・サービスの音楽か、ポッドキャスト番組を利用するという人が増えている。

ジムや商業施設、街角でもWi-Fiが普及しており、運転の際にもスマホとカーオーディオがBluetoothで自動的に繋がる。通信料金も概ね日本より格安の定額契約が大半を占める。まずは経済効率の良さと利便性が普及を後押ししたと言えるだろう。

海外ではラジオや音楽配信に匹敵する市場として期待

米国含め世界のポッドキャスト利用人口の増加は著しく、eMarketer社の調査研究によれば、2020年には3億3千万人だった総数が24年には5億人を超えると見込まれている。

21年時点の国別のデータでは、月に1回以上ポッドキャストを聴くインターネットユーザーの割合は、米国が40.0%、オーストラリアが33.2%、カナダ32.8%、スペイン30.0%、英国27.9%、メキシコ25.8%、フランス22.9%で、サブスク大手のSpotifyの母国スウェーデンでも34.6%と高い数値を見せている。

音声メディアとして言語の限界はあるものの、ラジオ放送やサブスク音楽サービスに匹敵する市場として期待されているが、日本での普及は同調査でも11.8%と大きく出遅れている。

なぜ、そのようなガラパゴス状態になっているのか? 複数の理由が考えられる。
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文=北谷賢司 編集=宇藤智子

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