MLBも、メタバースとNFTをリーグとして戦略的にメタバース空間で統制するため、各球場における全てのファン体験をメタバース上で複製し、試合観戦を含め、世界中のMLBファンにリアルタイムで届けることを目指している──。
MLBで初代専任ディレクターを務めるマット・ジャプコ氏が、11月16日のKIT虎ノ門大学院コンテンツ&テクノロジー研究所主催セミナーに登壇し、その戦略を披露した。
メタバースをデジタルビジネスの核に
従来からMLBは、専門部門を立ち上げ、試合のストリーミング中継の有償販売、ビデオゲームやNFT商品へのライセンス付与など、デジタル化を新たな収入源と位置づけ積極的に取り組んできたが、今後は他のメジャースポーツに先んじて、メタバースを核にデジタルビジネスを展開することを目指すという。
これまで各球団が自主的に構築してきた球場のメタバース版を「没入型デジタルツイン」としてネットワーク化し、MLB空間に全ての球場を収納。試合の視聴や様々な疑似体験、商品購入を一元管理する。
また、アクセスに関しては、世界中のファンが所有するデバイスによって差異が生じないよう、意図的にWebブラウザ・ベースとし、スマホからも簡単にメタバースに入れるシステムとなっている。
独自の空間システムに拘り
10億ドルの予算でメタバース上のプラットフォームを構築し、ソニーグループ等からの資金調達を続けているエピック・ゲームズ社や、メタ、グーグル、マイクロソフトなどに依存するスポーツ団体とは一線を画し、MLBは他社への依存性を警戒して、独自の空間システムに拘りを見せている。
MLBは、あくまでメタバース球場での高品位な体験を戦略の基礎に据え、リアル球場で実際に試合を楽しんでいるファンと世界に点在するファンが同時に、試合のみならず、場内のアメニティーを楽しみ、SNSでコミュニケートできる機能の充実を図っている。
その上で、空間内で露出される看板やビデオボードの広告収入、販売されるマーチャン商品とNFT、試合中継に加えて購入するカメラ映像、そして球場の一部や近隣の土地の不動産取引など、全ての収益を漏れなく獲得することを前提に、スポンサー・協力企業のメタバースとのプラグイン連携を積極的に推進し、巨大なメタバースの核となることを戦略的目標としているのである。
連載:スポーツ・エンタメビジネス「ドクターK」の視点