有望なコンテンツ、ビジネス活用のポイントは?
──コンテンツの面では、今後どのような発展が期待できそうでしょうか。企業研修や医師など専門職の技能トレーニングなども含め、教育現場でメタバースを活用できないかという問い合わせが増えています。
ただ、学校、中でも一見最も活用が進みそうな大学において、海外では導入が進んでいますが、日本では残念ながら資金の壁にぶつかっています。色々なアイデアが生まれてきてはいるのですが。
エンタメ領域に関しては、メタバースでのライブやスポーツ中継は、当たり前の時代が来ると思います。日本全国はもちろん、前編で話した通り、日本のIPを武器に海外のユーザーにも集まってもらえますから。
その他にも、例えばスポーツで言うと、観戦イベントだけでなく、レッスンでの活用なども考えられます。今リアルで選手やコーチが行っていることをオンラインでやることにもメリットはあると思います。
あとファン交流イベントもいいと思います。これは音楽アーティストやアニメキャラクターなどでもそうですが、色々な演出ができたり、安全に開催できるという大きなメリットがあります。スポーツバーといったものもメタバース上でやれたら面白いのではないでしょうか。
また、企業コミュニケーション観点での新たな試みとして、カネボウ化粧品の日焼け止めブランド「ALLIE」の常設メタバース空間で、ゴミ拾いをすると拾ったごみの量に応じて実際のビーチもきれいにしていく「バーチャルビーチクリーン活動」が実施される予定です。
ALLIEがブランドコンセプトに掲げている環境サステナビリティへの取り組みが、メタバースとリアルで連動して行われます。アースデイの4月22日にはサステナブルについて考えるイベントが、スペシャルゲストも迎えてcluster上で開催されます。
メタバースに正解はない
──目的をしっかりと据えたうえで、運用方法を自由な発想で考え、色々トライしてみることがカギということでしょうか。今はまだ、事業活用しているのは大企業が中心ということで、大きな組織の中で、運用についても規模や成果を求め過ぎてしまっているのかもしれません。でもせっかく作ったメタバースは使っていただかないともったいない。
メタバースには正解がないんです。人が多ければ多いほど価値があるかというと、そうではないはずです。どのような交流を提供できるか。
そういう意味では、対面での手続きやカウンセリング、商談などでの活用も考えられますよね。ちなみに僕は先月、自分の結婚式を「cluster」で開催しました。
まだまだこれから作っていける市場ですし、あらゆるビジネス分野の発展に密接に関わってくる大事な領域ですから、リアルの世界と同じように、どんどん色々なアイデアでチャレンジしてほしい。クラスターはそういった皆さんと一緒になって、日本発のメタバースを盛り上げていけるように取り組んでいきます。
ネットの世界でこれまで出遅れてきた日本にとって、今は最大のチャンス。メタバースが来るか来ないかの議論とか、黎明期と様子見している場合ではないんです。
メタバースは絶対に来ますから。
>> 前編:国産メタバースのクラスター、今年は「世界を狙う」
加藤直人◎1988年大阪府生まれ。大阪府立天王寺高校から京都大学理学部に進学し、宇宙論と量子コンピュータを研究。同大学院中退後、約3年間ひきこもり生活を過ごす。2015年にVR技術を駆使したスタートアップ「クラスター」を起業し、2017年、大規模バーチャルイベントを開催することのできるVRプラットフォーム「cluster」を公開。現在はイベントだけでなく、好きなアバターで友達としゃべったりオンラインゲームを投稿して遊ぶことのできるメタバースプラットフォームと進化している。2018年に『Forbes JAPAN』の「30 UNDER 30 JAPAN」(世界を変える30歳未満30人の日本人)に選出。2022年、集英社より『メタバース さよならアトムの時代』を上梓。