働き方

2023.02.22

移住、2拠点、ワーケーション 五島市「2060年2万人」への挑戦

福江島の魚藍観音展望所から見下ろす高浜海水浴場

現在放送中のNHKの朝ドラ、『舞いあがれ!』の舞台としても注目をあつめる長崎県・五島列島。そのなかで、人口、面積ともに最大を誇るのが、福江島を主とした島々で構成される五島市だ。

東京から約1300km、羽田から飛行機を乗り継いで約3時間。都市と比較して人口減少が深刻な地方、かつ離島でありながら、同市は2019年と2020年に、転出より転入が上回る「社会増」を達成。移住者は5年連続で200人超えを記録。その内訳は、働き世代の30代以下が75%で、8割以上が定着しているという。

「まだまだ課題は多いですが、順調に推移しています」と語るのは、五島市地域協働課の庄司 透氏。2018年に新設された同課では、市の最重要課題である人口減少対策の中の移住施策に取り組んでいる。2020年の人口は3万4391人。過去の実績から、2060年には1万991人まで落ち込むとされる予測に対し、移住を起爆剤に、同年の数字を2万人で抑えることを目標としている。


「人口が減ると、生活インフラの維持が難しくなります。病院や学校が減ったり、なくなったり。島なので、『それなら隣町に』というわけにもいきません。現状、衣食住には困らないので日常に影響はありませんが、運動会やお祭りに集まる人の少なさを感じたり、町内会の当番が短いスパンで回ってきたりなど、市民も徐々に実感していると思います」

島だからこその危機感だ。コロナのピーク時には、島と各地を繋ぐ飛行機も船も減便され、年間25万人来ていた観光客は10万人に減少。静かになった島の日々は、人口減少した未来を想像させた。

時間、空間、市場に「余白」のある島

五島列島といえば、2018年に世界遺産に登録された「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」など、文化・歴史面が有名だが、訪れてみると、まずその自然の素晴らしさに魅了される。

春夏には若草色、秋には黄金色に輝く福江島のシンボル「鬼岳」。離れて見ればエメラルドブルー、近づけば水の透明さに驚く数々のビーチ。そしてそれらの山や海が育む魚介や野菜、ブランド牛の五島牛など、食材も豊かだ。

福江島のシンボル「鬼岳」

「移住された方々は、やはり自然、なかでも身近にある絶景を“独り占め”できることに魅力を感じられています。その環境が子育てにいいという声も多いです。首都圏と比較すると通勤時間も短く、かかっても車で20分程度。空いた時間を子供と過ごしたり、趣味に使ったりもできます」と言うのは、同課の松野尾祐二氏。

かつて移住政策は、主に定年後のシニア向けだったが、5年ほど前からターゲットを20代、30代の子育て世代に特化。オンライン説明会やSNS展開を充実させ、補助金も同世代向けに手厚くなるようデザインしている。

移住を後押しする補助金に関して、“国境離島”に指定されている五島列島では、国の制度「雇用機会拡充支援事業」による支援も受けられる。例えば島内での創業には、年間最大450万円の補助。もちろん市場の規模では都市部に敵わないが、カフェやゲストハウスなどを始めるには、比較的参入しやすいという“余白”がある。

GWCの指定宿泊先(4泊目以降)のひとつ、福江町にあるセレンディップホテル(離島支援の事業でしょうか?)

コワーキングスペースが併設されている宿泊施設のひとつ、福江の町内(武家屋敷)にあるセレンディップホテル

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編集=鈴木奈央

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