自然に没入し、自分を解放する 辺境へのクルーズ旅という選択

ポナン社のタヒチ周遊クルーズにて

3年近く「鎖国」のような体験をした私たちは、これまでの生き方や働き方を見直し、ハイブリッドなライフスタイルを定着させた。その反面、オン・オフの境目が曖昧になり、仕事との距離を保つのが難しくなったと聞くことも多い。ライフとワークの両面で、これまでとは違う向き合い方が求められている。
 
クリエイティブなエネルギーを取り戻すには、頭の中をリセットして、新しいことを考える余白を持つことが必要だ。そのために有効な手段の一つが、日常を飛び出して全く違う場に身を置く「旅」だろう。
 
アート、自然、瞑想など“旅先”に求められるものもさまざまあるが、どこへ行くのかではなく、旅のスタイルとして、非日常に没頭する「クルーズ」にいま注目が集まっている。

フランスのポナン社が運航するクルーズ

「クルーズは暇な老夫婦が行くもの」という先入観があるとしたら、それは大きな誤解だ。辺境を巡り、宿泊施設がないような大自然にも身を投じることができるクルーズは、まだ見ぬ世界をあれもこれも見たい若者や、マインドを一新したいリーダー世代にこそ意味のある時間になるだろう。

まずクルーズ船は、私たちが深眠している間に次の目的地へと移動してくれる。毎朝違う島や景色の下で目覚めるのは、陸路ではかなわないセンセーションだ。複数の地を巡るのに、荷造りや移動の手間が省けるメリットも大きい。

今回、私は地上の楽園と言われる「タヒチ」をめぐる旅に出た。同地を愛したポスト印象派の画家、ポール・ゴーギャンに因んで、フランスのポナン社が運航する9日間の島めぐりだ。



旅のテーマは「意識の変容」。長かった巣篭もりを経た今だからこそ、日常と対極の景色や時空に身を置いてみたい。そのとき自分の意識がどう変わり、何を得られるのかを「実験」してみたいと考えたのだ。旅のパートナーには、スウェーデン人の高校の友人を選んだ。

私たちを乗せた「ポール・ゴーギャン」は、首都パペーテを出港後、フアヒネ、タハー、ボラボラ、モーレアというポリネシアの島々を周遊。タヒチは南半球なので、季節が日本と逆。6月から9月の冬場は、日中の気温は25度から30度。地中海のように湿度が低く、からっとしていて過ごしやすい。
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文=山田理絵

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