2023年「ウルフ賞」に日本人2人 化学・芸術部門で

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優れた科学者や芸術家に贈られる「ウルフ賞」の今年の受賞者が今週、発表された。受賞者8人は5カ国から選ばれ、うち2人は日本人だった。

同賞はイスラエルのウルフ財団が1978年に創設。科学と芸術の業績に対する世界で最も権威のある賞の一つとされている。授賞式は6月にクネセトで開催され、各分野の受賞者には10万ドル(約1300万円)の賞金が授与される。

科学部門は、医学、農学、数学、化学、物理学の5分野に分かれ、芸術部門は建築、音楽、絵画、彫刻の順に毎年違う分野から受賞者が選ばれる。受賞者の選定は、世界各国の著名な専門家からなる国際審査委員会が行う。

2023年の受賞者

医学部門は、「腸内分泌ホルモンのメカニズムと治療の可能性を解明した先駆的な業績」が評価されたカナダ・トロント大学のダニエル・ドラッカー教授が選ばれた。同教授は、糖尿病など代謝性疾患の治療への腸管ホルモンの活用に関する研究で世界的に知られている。

農業部門は、「水の流れを理解し、土壌中の汚染物質輸送を予測する画期的な業績」が評価されたブラジル・リオデジャネイロ連邦大学のマルティヌス・Th・ファン・ゲヌヒテン教授に授与される。同教授は40年のキャリアの中で、現代の農業経営や気候科学のカギとなる土壌物理学と通気帯水文学の分野の権威となった。

化学部門は、「RNAとタンパク質の機能と病的機能不全を明らかにした先駆的発見と、これらの生体高分子の能力を人間の疾患緩和のために新しい方法で利用する戦略を生み出した」功績がたたえられ、米シカゴ大学の何川教授、東京大学の菅裕明教授、米スクリプス研究所のジェフリー・W・ケリー教授の3人が共同受賞する。

数学部門は、「ウェーブレット理論と応用調和解析の業績」により、米デューク大学のイングリッド・ドブシー教授に授与される。同教授の研究は、画像や信号がどのように数値処理されるかについてのもので、医療用画像処理、無線通信、デジタルシネマなど、さまざまな技術に革新をもたらした。

芸術部門は、「アート制作の可能性を再定義し、ビジュアルアートを生まれ変わらせた」として、日本の中谷芙二子と英国のリチャード・ロングの共同受賞が決まった。

中谷は70年にわたるキャリアで、環境、知覚、コミュニケーションなどをテーマに、彫刻、フィルムやビデオ、インスタレーション、絵画などを制作している。英国の著名彫刻家であるロングは、自然をモチーフにした彫刻、写真、ドローイング、テキストなど、影響力のある作品を制作している。

forbes.com 原文

翻訳=上西雄太

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