ポッドキャスト、日本でこれまで普及しなかった理由と今後の可能性

テレビ局、タレントマネジメントにもスタンスの違い

ポッドキャスト利用者の嗜好が高い番組は国内外問わず、報道・情報系だ。

欧米のテレビ局が報道番組の音声版をポッドキャスト番組として直ぐに配信しているのに対して、日本の放送局は著作権のクリアランスなどを阻害理由として、音声のみの配信に否定的なところが多い。

これは、多くの欧米人が屋外や車中でもCM付きで最新のテレビニュースや情報番組を聴いていることを考えると、番組聴取者を取り逃しているだけでなく、広告宣伝費も稼ぎ損ねており、非常に残念なことだ。

オトナル・朝日新聞社「PODCAST REPORT IN JAPAN ポッドキャスト国内利用実態調査2022」調査対象の日本国内15歳から69歳の10000人の中から人口構成比で抽出したポッドキャストを日常的に聴くユーザー600人への調査

オトナル・朝日新聞社「PODCAST REPORT IN JAPAN ポッドキャスト国内利用実態調査2022」調査対象の日本国内15歳から69歳の10000人の中から人口構成比で抽出したポッドキャストを日常的に聴くユーザー600人への調査


また、多くの大手芸能事務所が、タレントを出演させることに積極的でないことも惜しい。

欧米では著名人のコラムや対談、小説の朗読なども人気があり、放送ほど表現上の制限を受けない環境で、自分の個性をファンに伝えることを好む著名タレントがホストとしてレギュラー番組を制作・配信し、大きな成功を収めている。

しかし日本では、ポッドキャストの収支構造も確立されておらず、スポンサー獲得も不安定である事から、看板俳優やアーティストにポッドキャスト番組を持たせたり、ゲスト出演させることに大半のマネジメントは未だ否定的である。

そして、ファンクラブの会員特典やスポンサーのプレミアムとして聴取パスを配布するといった、新たなクロスマーケティング手法としても重用され始めている欧米に対し、この点においても、日本は大きく出遅れてしまっている。

新たな商機を見逃さない欧米のメディア産業

ポッドキャストは、映像メディアと比較するとどうしても地味な素材とされることは否定できない。しかし、その商業的な可能性に気付いた欧米のメディア産業はこぞって参入を図っている。

22年12月のPodtrac社の調査によると、早期から紙面の音声化をポッドキャストで実現してきたニューヨーク・タイムズ紙の月間ユニーク聴取者数は900万人、ストリーミング&ダウンロード合計は1億3千万に及び、米三大テレビネットワークのABC、CBS、NBCも夕方の全国放送ニュース番組や朝ワイド、プライムタイムの調査報道番組のポッドキャスト版を毎日リリースしており、NBCはニュース部門だけで月間ユニーク聴取者数1千万人、ストリーミング&ダウンロード合計6千万を超えている。

日本でここまでの数字は期待できないだろうが、この商機、報道情報や価値あるコンテンツの更なる普及を逃していることは大いに悔やまれる。

成長を妨げる様々な要因が存在しているものの、その解消・改善により、ポッドキャストが新たなメディアとして発展していくことを強く期待したい。

連載:スポーツ・エンタメビジネス「ドクターK」の視点

文=北谷賢司 編集=宇藤智子

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