日本の市場構造が影響か
ポッドキャストは一部有料制だが、大半は広告付きの無料サービスである。2022年のポッドキャスト関連の広告収益は、米国では2500億円超える規模(IAB社推計)だが、日本では145億円に満たない(デジタルインファクト社推計)。日本国内では、スポンサーに対して大きな提案力を持つ大手広告代理店がポッドキャスト広告を推奨しなければ出稿増は期待できないが、現状を見る限りでは未だ、積極的にポッドキャストを新規媒体と認識して、広告予算をシフトするように動いてはいないようだ。
ポッドキャストを含むデジタル広告は、従来の視聴率や聴取率のような統計と憶測によるリーチではなく、誰がいつ、どこで視聴・聴取したかが実数で確認できる。媒体購入の責任も果たす立場にとっては、実は面倒な存在でもあるということも現実的な理由の一つと言えるだろう。
対して、海外では厳しくデータで広告宣伝の成果を要求されることから、既にデジタル媒体対応が進んでおり、ポッドキャスト出稿に対する効果計測データをリアルタイムでスポンサーと共有することも普遍化している。
また、「ラジコ(radiko)」の存在も、理由の一つとして考えられる。
2010年に電通等の主導で設立され、系列に関わらず全国の主要AM/FM局やADK、博報堂DY、東急エージェンシーなどを株主とするラジコは、原則、放送エリア内は無料、エリア外での聴取は有料とする配信事業で、タイムシフト聴取も可能であることから、ラジオ各局の優先的なネット配信窓口とされている。
別途、TOKYO FMとJFNC(ジャパンエフエムネットワーク)が独自のプラットフォーム「オーディー(AuDee)」を構築しているが、広告代理店からの更なるサポートを得るためには、ポッドキャスト編成の強化で、Radikoとの差別化を図る事が重要だろう。
苦節を経てラジコがようやく普及の兆しを見せているタイミングで、先ずはラジコへの出稿セールスを優先することは否めない対応であろうか。
外資勢に対抗できるプラットフォーマーが不在
ポッドキャストは直接Webサイトにアクセスして聴取することもできるが、大半の利用者はプラットフォームから番組を聴いている。冒頭のオトナルと朝日新聞社の調査でも、Spotify、Apple Podcast、Amazon Musicを介して番組を聴取している利用者が多いとの結果が報告されている。
こうしたプラットフォームは独自の番組を制作・配信するとともに、有償で番組制作会社など第三者による番組も加えて編成を充実させ、圧倒的な選択肢を提供することでその優位性を固持している。
対して、国内資本のプラットフォームは脆弱と言わざるを得ないが、先日2月20日に楽天の定額制音楽アプリ「Rakuten Music」が、楽天ID保有者なら無料で利用できるポッドキャストの提供を、ニュース、生活情報からエンタメまで約330番組で始めた。
オリジナルコンテンツも、K-POPや韓国のトレンド情報を扱う番組を第一弾として順次追加し、ユーザーのサービスへの接触頻度およびエンゲージメント向上を目指して、注力していくという。
ビデオ配信サブスクにおけるAbemaTVやU-NEXTのように、外資プラットフォームに対抗できそうな存在となれるか。