「私たちのデータは、オウムたちが単語やフレーズを文脈に沿って使うことができることを示していると考えられますが、それは必ずしも理解していることを示唆するものではありません」とベネディクト教授が釘を差した。
また調査協力者たちは、自分のペットであるオウムが、学習した言語をもとに新しい単語を発明したり、フレーズを再構成することによって、自らの発声能力を発揮していることも(微妙に)報告している(図4a)。
「鳥たちは文脈に沿って言語を使用し、中には単語を部品として認識していると思われるケースもあります。なぜならフレーズの中で単語を移動させることができるからです」とベネディクト教授がメールで語った。「ただし、私たちのデータからこれが真の『理解』であるという結論を出すことはできません」
オウムのおしゃべりが教えてくれること
私たちは長い間、オウム類が音声模倣を利用して自分たちの文化や社会交流を確立、維持し、家族や仲間たちとコミュニケーションを取っていることを知っている。人間と同じように。
これは、音声の模倣を学習することのできないほとんどの動物とは著しく異なる。進化的に遠い哺乳類、たとえばイルカやコウモリは同様の能力を持っているが、私たちに最も近い親戚であるヒト以外の霊長類は、新しい音を学習する能力を示さない。その一方で、進化的にずっと離れた動物である鳥類、中でもオウム類や鳴禽類は音声会話に長けている。しかしオウムの発声および認識能力はほとんどの科学者たちに見過ごされてきた。このため、オウム類は、音響コミュニケーションの生理学的、神経生物学的とよび進化的基盤の理解を深める重要な(かつほとんど未開拓の)研究対象となっている。
「この研究は、オウムたちが私たちに教えることはまだたくさんあるということを広く知らしめるものです」とダーリン教授はいう。
しかしこの研究は、著しく多様な環境で暮らし、大きく異なるレベルの訓練を人間の飼育者から受けているペットのオウムのみを対象にしており、注意深く設計された実験室環境下で研究されたものではない。
それでも研究チームは論文にこう書いている。「私たちのコミュニティ科学データに、集中した実験室作業やフィールドワークのような厳密さはありませんが、動物の意思伝達を研究する人たちにとって価値のある比較材料を提供するものです。今後の作業で、今回報告されたデータを、オウムの神経解剖学やオントロジーに関するデータと組み合わせることで、このデータ群を、話し言葉の重要成分である発声学習のモデルへと成長させられる可能性があります」
ペットのオウムに関するクラウドソーシングデータの価値を遅ればせながら認識させたこの研究は、現在オウムたちが直面している危機を改めて強調する役割も果たすだろう。
「野生のオウム類の約30%が、絶滅危惧、絶滅危惧IB類、あるいは絶滅危惧IA類に指定されるレベルまで個体数が減少しており、その主要な原因は密猟および居住地の喪失です」とダーリン教授は指摘する。「現存する個体を保護しない限り、私たちはこの驚くべき動物たちの複雑なコミュニケーションの進化を理解する機会を失うリスクを負うことになります」
出典:Lauryn Benedict, Alexandra Charles, Amirah Brockington and Christine R Dahlin (2022). A survey of vocal mimicry in companion parrots, Scientific Reports 12:20271 | doi:10.1038/s41598-022-24335-x
(forbes.com 原文)