地球上で最も大きな鳥類の絶滅理由を説明する新たな研究

巨大なミヒルングの脛骨を現代のエミューの骨と比較している論文共著者のトレバー・ウォージー准教授。(c)FLINDERS UNIVERSITY

ドロモルニス科は、「ミヒルング(この鳥のアボリジニー名)」あるいは俗に「サンダーバード」や「デーモンダック(悪魔のアヒル、現代の水鳥に関連していることから)」などとして知られている飛べない大型の鳥の種類であり、約3000万年のオーストラリアにおいて低木の茂みから頭を覗かせていた。

南オーストラリアのフリンダース山脈北部地域、およびノーザンテリトリーのアリススプリングス近くで発掘されたドロモルニスの骨は、彼らの繁殖様式の遅さとそれが絶滅にどうつながったのかを示す新たな知見をもたらした。

「私たちはこの化石したサンダーバードの骨の薄切片を顕微鏡で観察し、そこに記録されている生物学的情報を特定することができました。この骨の微細構造は、彼らが成体サイズになるまでに要した時間やいつ性的に成熟したかに関する情報をもたらすだけでなく、雌がいつ排卵したかまで教えてくれました」と論文著者である南アフリカ・ケープタウン大学のアヌスヤ・チンサミー-トゥラン教授はいう。

「この巨大な鳥たちが成体サイズになって性的成熟に達するまでにどれほどの年月がかかるのかといった疑問は、彼らの進化的成功と最終的に人間との生活で生き残ることに失敗したことを理解するための鍵です」

研究チームは、体高3メートル、体重600キログラムに達する最古で最大のミヒルングであるDromornis stirtoni(ドロモルニス・ストリティニ)の骨を、体高2メートル、体重240キログラムで更新世の種で最後に現れた最小のミヒルングであるGenyornis newtoni(ゲニオルニス・ニュートニ)と比較した。


芸術家の描いたドロモルニス (C)PETER TRUSLER/FLINDERS UNIVERSITY

研究結果によると、地球上で最大の鳥と考えられるドロモルニス・ストリティニは、完全な成体サイズになり性的に成熟するまでに、最大15年という長い年月が必要だったことがわかった。一方、ゲニオルニス・ニュートニは最古のミヒルングよりも成長が早く、おそらく数年以内に成体サイズになりすぐに繁殖を始めた。それでも、その成長速度は1年で成体サイズになって2年目には繁殖が可能になる現代のほぼすべての鳥類と比べてかなり遅い。

最後のミヒルングは、その生活環境を初期のエミューと共有していた。エミューは、現在世界で3番目に大きい鳥だ。エミューは1~2年以内に成体になって繁殖する。この種の繁殖戦略は、干ばつや食糧不足のために個体数が減少した後、有利な環境が戻ってきた際に個体数を回復することを可能にしている。

過去にミヒルング類は、気候変化や予期せぬ干ばつを生き延びてきたが、5万年から1万年前、人間は低木林地を焼き払い大型動物の狩猟を始めた。

エミューとドロモルニスの繁殖戦略の違いは、人間と遭遇するエミューに重要な利点をもたらしたが、最後のドロモルニス科はおよそ4万年前に絶滅した。

「悲しいことに、これらの驚くべき動物たちにとってオーストラリア内陸部が高温・乾燥化したことによる高まる気候変化の困難にすでに直面してた鳥たちにとって、その繁殖生態とサイズでは、現代の(より小さな)厳しい環境に対応するエミューの早い繁殖サイクルに追いつくことができませんでした」と研究者らは締めくくった。

論文「Osteohistology of Dromornis stirtoni (Aves: Dromornithidae) and the biological implications of the bone histology of the Australian mihirung birds」 は The Anatomical Record (2022)に掲載されている。

翻訳=高橋信夫

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