テクノロジー

2022.12.31 15:00

中国と技術を競う米国防総省は「電動航空機」実用化に向け動き出す


2022年12月初めにAFWERXの責任者を退いたネイサン・ディラー大佐は2021年、試験ミッションを行うのに試験・訓練場は完璧な「低リスク」の環境であり、eVTOL機によって現在、主に地上車両で行われている通信機器や試験機器の設置・撤去をより少人数でもっと迅速に行えると期待されていると語った。

もう1つの基本的な用途は、Black HawkやV-22Ospreyのような1時間に数千ドル(数十万円)もかかるヘリコプターで運ぶには無駄が多い、修理用の小さな部品の運搬だ。

また、ローパーは、第一世代のミッションとして、軍基地の警備にeVTOLを使用することは「間違いない」という。基地の敷地は何百マイルにもおよぶことがあり、車両に乗った兵士が第二次世界大戦時代のやり方で現在もパトロールを行っている。

空軍は敵陣で墜落したパイロットを救出するという危険な任務に、自律型または遠隔操縦型のeVTOLを使用することに関心を寄せている。騒音の少ない電気推進エンジンと救難ヘリよりも小さな機体サイズにより、敵に発見されずに出入りできる可能性がある。「兵士の命や手足を危険にさらすことなく、高リスクの地域にeVTOLを送り込むことができる」とディラーはいう。

Agility Primeはこのプログラムに参加する企業が75億ドル(約1兆10億円)の資金を調達するのをサポートしたと自慢しているが、プロトタイプの段階から、より費用のかかる民間安全認証試験や製造規模拡大の段階に進むにつれ、開発を手がける企業すべてが継続するための資金を確保できるわけではなくなる。eVTOL開発のパイオニアであるベイエリア拠点のKitty Hawk(キティホーク)は、2021年にAgility Primeを通じて運用演習を行った最初の企業だ。富豪の投資家ラリー・ペイジは、自律型航空機をすぐに市場に投入できるかどうかが疑問視される中、10月に突然同社を閉鎖した。

ローパーは、勝者のための健全な民間市場が出現すると考えている。空軍長官のフランク・ケンドールはeVTOLに懐疑的だと報じられているが、ローパーは、中国との優位性をめぐる米国の競争はほとんどが商業技術で展開されていることを軍は認識する必要があり、電動航空機によって国防総省がどれだけ直接利益を得るかに焦点を当てることだけが決定要因ではないと主張する。

「Agility Primeがもたらすより大きな影響は、この新興市場がマーケットの大きさ、創出される雇用、世界的な影響という点でかなりの価値を持つ可能性があるということだ」「米国優位の市場になる」とローパーは話した。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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