キャンプ場には電気もガスもないため、薪でドラム缶風呂を沸かす。2缶で温冷交代浴し、満点の星空を眺めながらの外気浴をすると最高に整う
次にJungle Clubのギャザリングで実際に行われていることを紹介しよう。ベースとなるのは、集落から4キロ以上離れた最果てのジャングルの中にあるキャンプ場と、農家民宿マナだ。参加者は現地メンバーの主宰するツアーに参加し、トレッキングや大きな滝で瞑想、釣りなどのアクティビティを満喫する。
また、キャンプ場の目の前の海で、魚などをとって自分たちで捌いて食べたり、イノシシの解体を見学したり、ドラム缶風呂に入ったりと、どれも西表島の原生自然の恵みがあるからこそできるユニークな体験だ。10月の集会では、自殺しに来た若者を救出するというエピソードも。
さらに、ビーチクリーンなどの環境保護の活動を行ったり、ブロックチェーンなどのテクノロジーを用いた島の課題解決を目論んでいる。
メンバーは経営者や編集者から、体験作家、ブロックチェーンエンジニア、瞑想研究家などに加え、西表のネイチャーガイド、民宿オーナー、猟師など、地元メンバーと一緒に活動しているのも特徴だ。
滝に打たれながらの瞑想も、メンバーならではの嗜み。参加していた大学生が行なった集会前後でのストレステストでは、参加後に全員が軽減された
「人間は様々な機能を機械に代替させ、能力を拡張させてきました。そしていま、BMIや遺伝子操作技術などにより、脳や心、身体のありようまでテクノロジカルにエディットできるようになっています。そうした未来は避けられないのですが、そうなったとしても、マインドアップローディングでもしない限り、人間は古来から引き継いでいる生命としての機能を継承しています」と七沢氏は考察する。
例えば、家畜は極めて人工的に人間によって作られたものだが、生命としての本能もまだ持っている。人間は人間自身をも家畜化してきたと言われるが、その様に家畜になり、人工的な環境に住まうとしても、生命である限り動物としての本能を持ち続ける。
「その本能を無理に抑え込んだり無視することで、特に現代の精神的な疾患は生まれているように思います。本能をより良い形で発揮させることでウェルビーイングを実現できる。だからこそ現代人にジャングルを処方して、原生自然感覚を思い出してもらうことが必要なのです」。
七沢智樹◎京都大学 農学部卒業後、音楽活動、ジャングルサバイバル生活を経て、会計士として活動。その後、メディテーションのためのテクノロジーを研究開発するベンチャーの立ち上げと経営に携わる。現在はテクノロジーを哲学するTechnel合同会社を設立し代表を務める。
連載:クリエイティブなライフスタイルの「種」
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