「現代人にジャングルを処方したい。DAOとNFTで」。聞いただけで何だかワクワクする。しかしながら、ジャングルとDAO、NFTがどのようにして?! なかなかピンとこないのが正直なところだろう。
今回はそんなユニークなプロジェクトを立ち上げたTechnel合同会社 代表の七沢智樹氏に、ジャングルが人間に与える影響やポテンシャル、DAOやNFTをどのように活用しているのかを聞いた。
プロジェクトの名前は「Jungle Club」、舞台となるのは90%が亜熱帯の原始林という西表島だ。2021年にユネスコ世界自然遺産に登録されたことも記憶に新しい。Jungle Clubの目的の一つは、現代の人々に“原生自然感覚”を取り戻させること。
「人間と動物の境界が曖昧だった頃、人間は地球に住む生き物の一種に過ぎませんでした。人間がその野生時代の感覚を取り戻すことで、各々の社会でのパフォーマンスを上げることのみならず、原生自然に根付く暮らしからリアルな持続可能性のヒントを得る。そうした活動が、人にとっても、地球にとっても、そのウェルビーイングのために必要なのでは」と七沢氏は語る。
七沢氏は東大や自治医科大学にも所属し、テクノロジー×哲学やウェルビーイングの概念的な研究を行っている。その中で「Extended Mind」という考え方に注目しているという。人間は脳だけで考えているのではなく、脳や道具、さらには他者や社会、環境を含めた全体の中で思考は生まれている、という考え方だ。
原始の森をそのまま残す秘境とも言われる西表島。イリオモテヤマネコをはじめとした、希少な固有種が多く生息する「この考え方から言えば、人は環境が変わると、その新たな環境とともに思考することになります。西表の原生自然の中で生まれる思考は、きっとクリエイティブなものになると私は考えています。古来、人々は人里離れた自然の中に身を置くことで創造性を磨いてきました。ブッタ、哲学者、科学者…。
西表島には今では貴重となった原生の自然が残っています。原生ジャングルの滝に打たれたり、海で魚を追うことで、参加者は自ずとクリエイティブになるはずなのです。そして、それをより促進するのが瞑想です。瞑想×ジャングル、これもJungle Clubの重要なファクターです」
実際にJungle Clubには、瞑想実践者が多く、サーチ・インサイド・ユアセルフの指導者で、Wisdom2.0Japanを主宰している荻野淳也氏も立ち上げメンバーの一人。ウェルビーイングに欠かせないマインドフルネスも、自然な身体感覚や心のあり方に気づいていくためのものだ。ジャングルによって呼び覚まされる原生自然感覚の力もあってか、普段とは違う深い瞑想体験ができると参加者たちは口をそろえる。
Jungle Clubは、NFTとDAOで運営されている。参加者はまず、西表島の希少な生物の写真を使用したNFTを購入する。それにより、DAOのDiscordに招待されオンライン上で自由にコミュニティにアクセスできるようになる。その後、希望者は実際に西表島で行われる現地集会=ギャザリングに参加し、ジャングルが処方される。
NFTはOpen Sea(NFTのマーケットプレイス)で売買できるので、出入りは自由だ。NFTの収益の15%は、島の環境保護団体に寄付され、収支はすべて参加者に公開されている。