そこで目を引いたのがユニークな家電製品の数々だ。出展企業の1つ「DaanTech(ダーンテック)」社は、フランス西部の大西洋に面したヴァンテ県に工場を構える食洗機メーカー。「フランスの孫正義」とも称されるエンジェル投資家のグザビエ・ニエル氏が2017年にパリで立ち上げた巨大な支援施設「Station F(スタシオンエフ)」から巣立ったスタートアップ会社である。
実はこの会社、来春に日本へ初上陸する。海外最初となる子会社を2023年4月に設立する予定だ。
同社は2016年に創設され、2020年10月から「Bob(ボブ)」と名付けられた食洗機の生産を始めた。販売累計は約6万5000台。このうち、ドイツ、オランダなど欧州中心に輸出が6割を占める。欧州以外では台湾で1000台を販売している。
生産開始後の1年間の売上高は約1000万ユーロ(約14億円)だ。同社のニコラ・ラヴァレック最高執行責任者(COO)は「コロナ禍で外食を控え、自宅で料理をする人が増えたのが追い風になった」と話す。
日本に初上陸する食洗機のBob
デザインはカラフルに28種類
「ボブ」のネーミングは一種の言葉遊びである。米国の人気テレビアニメ「スポンジ・ボブ」に着想を得たのだ。同アニメに登場する主人公は四角いスポンジの形をした「ボブ」。同社は「(洗浄用の)スポンジを捨てて、ボブを使おう」というキャッチフレーズを掲げている。
小型かつ軽量が同製品の特長だ。幅は34センチメートルで高さと奥行きはいずれも49センチメートル。食器2人分を基準にした大きさだが、最大で直径29センチメートルの皿まで洗浄可能という。重さは10.9キログラムで、分岐水栓の取り付けが不要なタンク式だ。同社の製品紹介のホームページにはバイクの後部座席やキャンピングカーに積むなど、持ち運びの便利さを強調する動画が掲載されている。
しゃれたデザインも売りの1つだ。ボディは白と黒で、ドアは14色。つまり28種類の組み合わせから自由に選ぶことができる。カラフルさを前面に押し出すのはいかにもフランス企業らしい。
日本の食洗機市場では現在、パナソニックが優位に立つ。「(当社の推計によると)パナソニックのシェアは約70パーセントに達するが、主力製品はわれわれと異なる」と話すラヴァレック氏。「ボブにはさまざまな色のものがあり、とてもキュート」と差別化には自信を見せる。
日本の子会社のトップに就任予定の同社ビジネス開発部のキャロル・トラン氏は交換留学生として東洋大学で学んだ経験を持つ。アジアの市場では、将来、韓国の開拓も視野に入れるが、「日本人はフランスのことが大好きで、フランスといえば、『トレビアン』という感じ。そこが韓国での(フランスに対する)印象とは違う」と指摘する。