10秒で歯磨完了の電動歯ブラシ
あごの形をしたY字型のブラシを本体に付けて口の中に入れるとわずか10秒で歯磨きが完了。フランス・リヨンに本社を置く「Y-Brush(ワイ・ブラッシュ)」社が手掛けるのは「10秒で歯をディープクリーニングできる音波振動歯ブラシ」。筆者のような無精者には頼りになりそうな製品である。ブラシ部分に取り付けられた3万5000本のナイロンフィラメントが振動し、上下の歯全体をそれぞれ5秒間で磨き上げる。
Y-Brushを使えば10秒間で歯磨きが完了
「人は普通、歯を磨くのがあまり好きでない」(同社のベンジャマン・コーアン社長兼共同創業者)のが製品開発のそもそもの理由。歯科医は歯磨きに1回当たり2分~3分かけることを勧めるが、同社によれば、フランスの場合、歯磨きに費やす時間は平均で45秒にとどまるという。「いかなる歯ブラシでも歯の間の歯垢を完全に取り除くのは難しい」と語るコーエン氏。音波テクノロジーで歯垢を落とすという技術面での優位性を強調する。
開発の根底には「食洗機、フードプロセッサー、ロボット掃除機。こうした製品はいずれも自らの手で行っていた作業を代替するもの。電動歯ブラシも原則は同じ」(コーアン氏)との考えがある。こちらも一部の電子部品を除いてほぼ「メイド・イン・フランス」の製品だ。
2019年の暮れに生産を開始し、2020年にはフランス中心に約2万台を販売。翌年には同6万台と3倍に膨らんだ。今後も前年の2倍~3倍のペースで売り上げを伸ばしたい考えだ。2025年までに1000万ユーロを投じて新工場を立ち上げ、生産能力の拡充を図るという。
仏メディアのインタビューに応じるY-Brushのベンジャマン・コーアン社長(左)
大人向けには標準機種と上位機種、子供向けにも1機種の計3製品を取りそろえ、標準機種の価格は79ユーロ(約1万1000円)。すでにシリコンを用いた中国製の廉価の類似製品も出回っているという。
ネット経由の販売が現在8割。海外での売り上げは全体の30パーセントで、日本市場の深耕も狙う。日本ではネットだけでなく、販路として家電店も視野に入れている。コーアン氏は「薬局やドラッグストアも興味を示している」と強気だ。