経済・社会

2022.12.28 16:30

九州電力の「火力発電所」跡地を、ビジネス創出の場に。仕掛け人に聞く


「ナカダイでは、DXにより捨てられたモノの状態の可視化に取り組んでいます。例えば、パソコンなどもシールをべたべたと貼ってしまえばリサイクルしづらいですし、使い倒したパソコンはプラスチック樹脂が劣化しているかもしれません。結局大事なのは、資源として使える状態で回収できるのかという点なのです」

「お客様から回収した製品の劣化の状態が分かれば、これはマテリアルリサイクルが難しいのでサーマルリサイクルしかない、といった判断ができます。この製品は3年以上経過すると劣化が激しくなってマテリアルリサイクルできなくなるといった傾向が分かってくれば、もっと早く回収してメンテナンスしたほうがよいか、逆に使い倒してもらってサーマルリサイクルしたほうがよいか、という判断ができるようになるのです」

「だからこそ、いわゆる『修理する権利』も基本的にはよいのですが、やはり個人が修理することにはリスクがあるなと思います。車検もそうですが、プロが見ているからこそ中古の市場が整っているわけです。

メンテナンスには善し悪しがあって、スマホでも自分で最後まで長く使い切ることを前提に修理をしてもらい、最後はリサイクルに回すという選択肢もあれば、必ず2年後には戻してもらいプロがちゃんとメンテナンスするスマホ版の車検のような選択肢もあり、もしかすると2年ずつ回収していったほうが結果として長く使える可能性もあるわけです」

「メーカーも含めて、自分たちの製品が3年後、5年後に各家庭でどの状態で使われているかを集合として見た人は恐らくいないと思うのですが、これができると、売り切りがよいのか、サブスクで所有権を渡さないほうがよいのか、経済だけではなく資源循環の目線からも最適な選択肢が見えてきます。単にリサイクルしやすい、解体しやすいといったレベルではなく、売り切りと2年に1回のメンテナンスとどちらがよいかが分かるような仕組みをここ10年ぐらいで作りたいなと考えています」

サーキュラーデザインにおいては「できる限り長く使う」という点が重視されがちだが、長く使うことを重視するあまりに製品の素材が劣化し、結果として循環の選択肢が減ってしまうリスクもある。1人だと10年しか使えないが、メンテナンスを挟みつつ5人が3年ずつ使えば15年使えるという選択肢がありうるということだ。

こうした選択を正しく行ううえでは、捨てられたモノの状態をいかに可視化できるかが鍵を握る。だからこそ、捨てられたモノを日常的に扱うナカダイのようなリサイクラーとメーカーとの連携が必要になるのだ。
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文=IDEAS FOR GOOD Editorial Team

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