経済・社会

2022.12.28 16:30

九州電力の「火力発電所」跡地を、ビジネス創出の場に。仕掛け人に聞く

田中友梨
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2022年7月、鹿児島県・薩摩川内市にある九州電力の旧火力発電所・川内発電所跡地をサーキュラーエコノミー(循環経済)の実現に向けた資源循環の社会実装拠点として活用する「サーキュラーパーク九州」構想が公表された。

同構想は、高度な廃棄物のリサイクル・再生技術を活用したハイレベルな資源循環および産官学ネットワークを活かした中長期の研究開発・実証実験の協業・支援により、新しい循環型ビジネスを創出することを目指している。すでに花王やトヨタ自動車、日本ロレアル、パナソニックなどの大手企業も多数賛同しており、日本の脱炭素・サーキュラーエコノミーの未来を担う拠点として注目を集めている一大プロジェクトだ。

薩摩川内市、九州電力、鹿児島銀行、早稲田大学とともにこの構想の中心にいるのが、リサイクル率99%を誇るナカダイと循環ビジネス構築等を手がけるモノファクトリーをグループとするナカダイホールディングス(以下、ナカダイ)だ。

「捨て方をデザインし、使い方を創造する」リマーケティングビジネスを営み、リサイクル率99%という技術力を武器に日本の循環ビジネスを牽引してきたナカダイは、サーキュラーエコノミーに関心がある読者の方であれば、ご存じの方も多いことだろう。

今回IDEAS FOR GOOD編集部では、同社の代表・中台澄之氏に、循環ビジネスのプロである同氏の目から見た日本のサーキュラーエコノミーの現状や課題、「サーキュラーパーク九州」構想が描く未来について詳しくお話を伺ってきた。

「できていること」ではなく「課題」を共有してほしい。


最近では日本においてもサーキュラーエコノミーと名のつく事業や取り組みが急速に増えてきていると感じるが、ここ数年の変化を中台氏はどのように見ているのだろうか。


中台澄之氏

「特にコロナで本当に加速したなと感じているのですが、やはり菅前首相のカーボンニュートラル宣言は大きかったと思います。コロナにより消費者の行動が変わるなかで企業も変わらなければいけないと言い始めたわけですが、その中に循環や脱炭素といった要素を入れないと生き残っていけないとバシッと線を引いたのが、菅前首相のアナウンスでした」

「そこから一気に世の中が動いている気はするのですが、中には“やるやる詐欺”のようなものも多いので、最近は企業に対しても『できている感を出すのはやめて、課題を共有してください』と言っています。私たちからすると、課題を明確に言ってもらえないと、ナカダイもですが、他の企業や大学、研究機関含め、それなら自分たちの技術やノウハウでこれができる、といったコラボレーションが生まれないのです」

企業の立場としては広報の視点でついつい自社の優れた取り組みだけを発信しようと考えがちだが、サーキュラーエコノミーを実現するためには、「できていること」ではなく「課題」の共有が重要となるのだ。
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文=IDEAS FOR GOOD Editorial Team

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