いま始めないと、2030年には間に合わない。
「できている感」を出すのではなく、「できていないこと」をしっかり共有してほしい。中台氏がそう考える背景には、すでに待ったなしの状況で現在も深刻化し続ける気候変動の問題がある。
「2030年までに46%削減という達成しなければいけない数字は明確に出ているわけですから、もう『やっています』『こういう活動しています』というレベルではなく、脱炭素や循環をビジネスフェーズまで上げていかなければいけません。また、循環の世界では、仮にいま商品を発売したとしても、それを消費者が使って回収するまでに5年かかれば、回収できるのは2028年になるわけです。
となると、もう2030年まで2年間しか改善の機会はないですよね。そう考えると、今の時点でもすでに遅いわけです」
素材や製品が循環するサイクルを考慮に入れれば、2030年の脱炭素目標実現に向けて動き出すには現在ですら手遅れ状態になっている。いま動き出さない限り、2030年にはできている企業とそうでない企業との間で大きなギャップが生まれ、準備をしてこなかった企業は大きなダメージを受けることになる。これが、中台氏が現場で覚えている危機感だ。
さまざまな素材がディスプレイされる、モノファクトリーのオフィス
「サーキュラーパーク九州」は、本気でやる人たちだけの場所
脱炭素、サーキュラーエコノミーの実現に向けて残された時間は少ない。一方で、企業としてはいくら循環型のビジネスを実現したくても本当に信頼できるパートナーでない限り、自社の課題を包み隠さず共有し、解決に向けて協働することは難しい。薩摩川内市で始まった「サーキュラーパーク九州」構想は、この問題を解決する場所でもある。中台氏は、構想の価値をこう語る。
「やはり、課題を共有するためにも循環を本気でやる人たちだけのマーケットや集合体が必要です。企業が課題を広く一般に公開することは難しいので、サーキュラーパーク九州の中ではそれらがクローズドで公開されており、情報だけを取って逃げていくような動きを確実に防ぐ仕組みを作りたいなと。そうすることで、企業も安心して情報を出してくれます。
そのためには、本気でやる人しか入れないというのが大事になってきます。結局最後は人と人とのつながりなので、信頼できる人同士がみんなで繋がれるかどうかにかかっているのです」
サーキュラーパーク九州構想では、参画企業を本気で循環に取り組みたい企業だけに限定することで安心して課題や自社の情報を共有できる場所を提供し、本気の企業だけでスピード感を持って社会実装を進めていくことを目指しているのだ。
そのため、同構想では参画企業の数にはこだわらず、一社一社としっかり顔が見える関係を構築し、リスクも利益も共有することを大切にしているという。