形を残したまま「多」から「一」に回収する仕組みをつくる
最終的に焼却に回っていくごみの量を減らし、循環を実現させるために、メーカーや小売、物流といった各ステークホルダーには何ができるだろうか。
「メーカーや小売に期待したいのは、とにかく回収することですね。回収なくして循環は実現できないので。また、回収にあたっては市民が持ってきてくれればよいのですが、それが難しい場合に大事になるのが、ロジスティクスです。
物流企業は『一』から『多』へ撒いていくのにはとても長けていますが、『多』から『一』に持ってくるという仕組みは現状ごみ回収にしか存在していません。また、ごみのパッカー車も形状を維持せずに回収する仕組みしかないのです」
「もし形状を維持した状態で『多』から『一』への回収ができるのであれば、リユースも修理も可能になるので、埋め立てるまでの時間をどんどん長くすることができます。それでは、なぜそれができないのかと聞くと『ごみと新品は一緒に載せられない』と言われるのですが、ごみであれば断ればよいのです。資源になるレベルまでしっかりと洗って綺麗な状態になったものだけを回収すればよいと思います」
「捨てない」という選択肢を増やしたい。
脱炭素社会への移行が求められるなか、これまで社会を支えてきた火力発電所をリノベーションして循環工業団地に変えていくという「サーキュラーパーク九州」構想をはじめ、最適な循環の選択を実現すべく廃棄物の状態を可視化するなど、中台氏が持つビジョンは聞いているだけでワクワクするが、その先にある、中台氏が実現したい社会像とはどのようなものなのだろうか。最後に聞いてみた。
「よく『ごみがない社会』をつくりたいと話しています。生活をしている以上、不要なモノはどうしても出てしまうわけですが、不要なモノ=廃棄物ではなく、資源として循環する社会になって欲しいなと思っています。我慢して買うのをやめよう、使うのをやめよう、ではなく、買ってもよいし使ってもよいと思うのですが、それを自分がいらないと思ったときにごみにしないで欲しいなと」
「そのためには、捨てないという選択肢を増やすことが大事です。今は、いらなくなったら燃えるごみの日に捨てるという選択肢がマインドのほとんどを占めていると思うのですが、そうではない選択肢が増えることが、結局はごみがなくなる社会につながると思うのです。
だから、47都道府県に道の駅のように『モノファクトリー』があるのもよいと思うし、全国の火力発電所がサーキュラーパークになっているというのもよいと思うし。僕が生きているうちにはできないかもしれないですが、スタートぐらいは切っておきたいですね」
編集後記
長年にわたり廃棄物の現場で企業や自治体の現状を見てきた中台氏からは、どのような質問をしても同氏なりの考えが明確に返ってくる。また、現場を見てきたからこそ覚えている現状に対する危機感も、言葉の端々からひしひしと伝わってきた。一方で、我慢を強いるのではなく、一人一人ができることをやるのが大事という前向きな姿勢にも強く共感した。
同氏が話すとおり、いま私たちがどのように動くかで、10年後の未来は大きく変わったものになるだろう。本気でサーキュラーパークの実現に関わるという方法もあれば、生活者として責任あるモノの手放し方をするという方法もある。いずれにせよ大事なのは、「いま」すぐに行動をはじめること。そう強く感じた取材だった。
【参照サイト】
・ナカダイ
・モノファクトリー
・「サーキュラーパーク九州」構想 川内(火力)発電所跡地利活用事業
※この記事は、2022年12月にリリースされたCircular Economy Hubからの転載です。
(上記の記事はハーチの「IDEAS FOR GOOD」に掲載された記事を転載したものです)