経済・社会

2022.12.28 16:30

九州電力の「火力発電所」跡地を、ビジネス創出の場に。仕掛け人に聞く


全国の火力発電所が、循環工業団地に変わる日


中台氏が「サーキュラーパーク九州」を通じて実現したいのは、そこに来れば循環とは何かが全て体感でき、学べるフィールドだ。ナカダイのリサイクル技術はもちろん、新しい循環型素材からできた製品と出会えるカフェやホテルなど、人々が我慢するのではなく、ポジティブに循環に取り組めるような実証実験ができるフィールドを作りたいという。

また、脱炭素の流れの中で役目を終えることになった旧火力発電所をその舞台とするという計画にも、プロジェクトメンバーらの間で秘められた思いがある。

「広大な敷地で多くの雇用を生み出してきた発電所を倒すことで地元が疲弊してしまったり、多大なコストをかけて解体して更地にしたりするよりも、全国の火力発電所をリノベーションして全国の循環工業団地にしていくことができれば素晴らしいですよね」



「薩摩川内市は、市民からモノを回収するといったときの協力体制がものすごく整っています。それはなぜかというと、やはり市長も含めて市を挙げてサーキュラー都市として国内外にアピールし、そこに投資を呼んで成長していきたいという意思を明確に持っているからです」

「我々としては、もちろん火力発電所跡地の活用方法の雛形でもあるのですが、自治体がこうした役割を担うと循環のビジネスが成り立つという産官学連携の雛形もできるのではないかと思っています。それを他の市も真似することで、環境省の地域循環共生圏のように小さいエリアでもビジネスが回る仕組みができる可能性があるなと」

日本全国各地にある火力発電所が、地域の資源循環を担う循環工業団地へと生まれ変わり、地域の環境・社会・経済を支える地域循環共生圏のハブとなっていく。「サーキュラーパーク九州」構想の先にあるのは、そんな素敵な未来だ。

「私は九州電力が32万平米もの土地をこの構想のために使う検討を始めてくれたことがすごいと思っていて。電力会社は再生可能エネルギーの文脈は持っていても資源循環の文脈はほとんど持っていないわけですよね。そこにナカダイのような群馬の80人くらいの会社と一緒にサーキュラーエコノミーを実現する可能性を、しかも、自社の重要な資産を使うというリスクをとって探ってくれています。

九州電力という名前もあり、薩摩川内市の協力もあって、さらに具体的な場所もある。ここでやります、と指し示せたからこそ、本気でやりたいという大手企業も来てくれました。だからこそ、100社、200社と呼ぶよりも、10社や20社でもよいから絶対にやりきるという企業だけで連携したいのです」

本気で循環経済の実現を目指す薩摩川内市。そのためにリスクをとった九州電力。その期待に応えようとするナカダイ。この三者の想いがあったからこそ、名だたる大企業らも参画を決めたのだろう。


サーキュラーパーク九州の将来的な整備イメージ。画像:薩摩川内市「サーキュラーパーク九州」構想 川内(火力)発電所跡地利活用事業 より引用
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文=IDEAS FOR GOOD Editorial Team

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