中学生が電通マンに「脱炭素化しないと日本経済はなぜピンチか」を聞いてみた

青稜中学校の村田昊太朗さん、杉田莉香さん、土谷萌愛さん、下平直冬さん。電通のシニア・ビジネス開発ディレクターの角谷浩氏と(都内青稜中学高等学校にて。撮影=曽川拓哉)


日々の暮らしでも「脱炭素化できる」


皆さんが社会に出る頃には、今の「デジタル化」同様、「脱炭素化」はもはや当たり前のことになっているはずです。だから、今でいえば「DX音痴」みたいな、残念なガラパゴス社会人にならないために、日常的に意識づけをしておくといいですよね。

たとえばコンビニでお菓子を買う時に、この1個を工場で作る時に、そしてここに運ぶまでに、どれだけのCO2が出ているのだろう?とか、食べ残して捨ててしまったらそのゴミを運ぶのにまたどれくらいCO2が出るのだろう?とかと考える習慣を持つといいと思います。

「レジ袋の有料化」が一番いい例です。

実は、レジ袋は日本が使っているプラスチック全体のほんの2%くらいで、ほぼ誤差の範囲といってもいい。でも、脱炭素の意識づけには大きな貢献をしてくれています。買い物をする度に「レジ袋ご利用ですか?」と聞かれることは、意識するきっかけになりますよね。

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──ここまで聞いてくると、日本は、世界の中では本当に「脱炭素後進国」なのですね……

日本は後進国、というより「脱炭素ガラパゴス国」かもしれません。専門家には「脱炭素で日本は5年遅れている」と言う人もいます。これは、前述したように、世界では2015年のパリ協定で足並みが揃ったのに、日本は2020年の菅元首相の所信表明演説まで「対岸の火事」的なムードだったことと計算が合います。

──ロシア・ウクライナ戦争で今、鉱物資源があまり日本に届いていないと聞きました。日本にとっては、海外依存から脱却するチャンスなのでは?

たしかに。ロシアはエネルギー大国で、ロシアから輸入できなくなったということで、世界中のさまざまな国でも、そして日本でも物価が上がっている。実はアメリカ、ヨーロッパはもっと物価が上がっていて、たとえばハワイだとラーメン1杯が日本円にして2000円以上、アメリカの文化で「チップ」も払うから、「家族4人でラーメンを食べたら1万円払った」なんていうことがあるようですね。

今は目先の問題が気になってしまうので、早く戦争が終わって早く物価が元に戻ってくれないかな、なんて思ってしまいますが、おっしゃるとおり、海外からのエネルギー輸入に依存せず、自国で自給自足する方法を模索する機会ではないかという見方は、長い目で見ればその通りだと思います。

──パリ協定をきっかけに世界が脱炭素化に向けて大きく動いたわけですが、パリ協定前は「低炭素化」という取り組みではなかったでしょうか。この2つはどう違うのですか?

確かにパリ協定より前は「低炭素」でしたよね。京都議定書の際、先進国に対しては温室効果ガス排出量を「日本は6%、アメリカ7%、EU全体で8%を2012年までに減らしなさい、減らせなかった国は他の国にお金を払って権利を買ってでも目標を達成しなさい」と求められました。その時は、「低炭素化」という指示であり、表現でした。

「低炭素」の代わりに「カーボンゼロ」「脱炭素」という言葉が広まったのはパリ協定以降かと思います。パリ協定において「今世紀後半に排出量と吸収量をバランスさせる」つまりカーボンニュートラルな状態を目指すという合意がされたためです。今となっては逆に「低炭素」という言葉はあまり聞かなくなりましたよね。
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協力=岡田麻衣子 構成・編集=石井節子 撮影=曽川拓哉

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