中学生が電通マンに「脱炭素化しないと日本経済はなぜピンチか」を聞いてみた

青稜中学校の村田昊太朗さん、杉田莉香さん、土谷萌愛さん、下平直冬さん。電通のシニア・ビジネス開発ディレクターの角谷浩氏と(都内青稜中学高等学校にて。撮影=曽川拓哉)


産業界は「脱炭素化」の下、どういう仕組みになっている?


それでは次に、「脱炭素」の文脈からビジネスがどういう構造になっているのかについてお話したいと思いますが、その前にまずは「企業の脱炭素への取り組みについて」生活者への調査結果を見てください。

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カーボンニュートラルに積極的に取り組んでいる企業の商品を買いたい、そのサービスを利用したいという人が6割以上、そういう企業を応援したいという人が7割以上いるということがわかりますね。

このように日本人の中でも「脱炭素」という問題への意識は、EUなどに比べればまだ低いものの、少しずつ向上してきています。

企業側の取り組み、その4つのステップ


さて、企業が脱炭素戦略を進めるためにどういう取組みをしているか、それについては大きく4つステップがあります。この図を見てください。

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「ステップ1」では戦略を策定します。まず、それぞれの企業がどれだけCO2を排出しているのかを測定し、前述した「SCOPE1」「2」「3」で把握して、これからどう削減していくかを計画する。これはコンサルティングファームのような会社が行っていることが多いです。

「ステップ2」では、実際の削減に取り組みます。これには、太陽光発電や風力発電といった自然由来の再エネ電気に変えていく「再エネ(再生可能エネルギー)化」の施策などが含まれます。日本では主に商社やエネルギー会社などが行っています。

「ステップ3」ではオフセットです。カーボンクレジット、日本だと前述のJ-クレジットなどを使った計画の立案を行います。海外の企業では、ステップ1、2までに削減できなかった排出量をオフセットすることはすでに当たり前になっています。しかし日本ではオフセットまでしっかり着手している企業はまだ少ないのが現状です。

「ステップ4」ではコミュニケーション活動を行います。「ステップ3」まで進んで初めて、次に、企業の宣伝部やマーケティング部の人たちが広告会社を呼んで、自分たちの企業が脱炭素社会実現に向けてどのように取り組んでいるかを伝えるべく宣伝するわけです。

──新聞社とかメディアの活動は、このうちどこに貢献できるのでしょうか?

メディアの諸企業は「ステップ4」の中の「コミュニケーション」の部分を担います。Forbes JAPANさんもそうですね。

われわれ広告会社はクリエイティブ、テレビCMなどを作って「メディアプランニング」を行いますが、広告会社は実際のメディアを持っていませんので、メディア各社にそれらのメッセージを発信してもらうことも重要ですね。

──この図はすごくわかりやすいですね。

なぜ、この図を作ったかを説明しましょう。

企業側からすれば、最初の戦略策定はコンサルティングファームに、再エネの調達はエネルギー会社や商社に、カーボンクレジットはまた別の企業に依頼をして、広告会社にはCMを依頼する、メディアに乗せて伝える、といった具合にすべてバラバラに取引しないといけないわけで、最初から最後まで一貫した戦略立案がとても実現しづらい現状がある。そのことをわかってもらうためです。

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私たちが「カーボンニュートラル特命班」を立ち上げたのは、一気通貫に、最初から最後までお手伝いできるようにしよう、そういうワンストップのチームを作ろう、ということが目的でした。そうすれば日本企業の脱炭素戦略をサポートしやすくなるし、その先にある脱炭素社会の実現にも貢献できるのではないかと。

私たちの会社では、ステップ1と4のコンサルティング、コミュニケーションはできるのですが、今後は社外のパートナーとアライアンスを組むことでステップ2と3の「再エネ」や「クレジット」も提供できるようにし、ステップ1から4までをまるっと企業から任せてもらえるような新しいサービスを作ろうとしているんです。
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協力=岡田麻衣子 構成・編集=石井節子 撮影=曽川拓哉

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