ウェルビーイング効果が実証。野沢温泉村「スポーツワーケーション」の魅力

写真提供=野沢温泉村観光協会/野沢温泉スキー場


野沢温泉村は100年前からウェルビーイングビレッジだった


この実験結果を踏まえ、今後はJR東日本と連携した企業向けのウェルビーイングビレッジのプランを構想しているとのこと。またウインタースポーツだけでなく、サマースキーやマウンテンバイクなどオールシーズン利用できるような企画も検討するという。
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2020年に世界最新鋭のゴンドラを導入した「長坂ゴンドラ」。中には床までスケルトンのゴンドラキャビンもあり、オールシーズン豊かな自然を楽しむことができる
2020年に世界最新鋭のゴンドラを導入した「長坂ゴンドラ」。中には床までスケルトンのゴンドラキャビンもあり、オールシーズン豊かな自然を楽しむことができる

受け入れる側である野沢温泉村観光産業課の竹井勝氏は、村の特性と今回のプロジェクトの親和性の高さについて、次のように語ってくれた。

「最近になって、スポーツを活用したまちづくり、地方創生に取り組む自治体が増えていますが、野沢温泉村ではすでに100年ほど前からそうした村づくりをしてきました。最初はスキーが得意な方達がスキークラブをつくり自分たちで楽しんでいたそうです。それがだんだん大学生などに広まっていって、最終的には日本有数のスキー場になっていったわけです。
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その間、外部資本が入ることなく、スキー場を村で運営してきたのも珍しいと思います。さすがに村だけで続けていくのは難しいということになり2005年にスキー場を運営する株式会社野沢温泉をつくりました。現在はそちらが中心になって、ウインタースポーツだけでなく1年を通してスポーツを楽しめるまちづくりを行っています」

つまり、野沢温泉村は100年も前からスポーツと健康(温泉)とまちづくりという、スポーツを通したウェルビーイングに村をあげて取り組んでいるのだ。

そのため、設備投資も万全だ。日本国内のスキー場のスキーリフトやゴンドラの多くは、スキーが全盛期だった1990年前後に建設されたもので、老朽化が進んでいる。しかし、野沢温泉村では2020年の冬に世界最新鋭のラグジュアリーなゴンドラを導入。360度にわたって景色が楽しめるガラス張りのゴンドラは10人乗りで、マウンテンバイクを乗せることもできるので、夏にはダウンヒルなどのアクティビティを手軽に楽しむことも可能になった。

スポーツが解決する、さまざまな社会課題


このプロジェクトは単にビジネスマンの生産性を高めるだけでなく、コロナ禍で打撃を受けたリゾートが産業の地方自治体にとっても、あらたな人流ができ、地方創生に繋がるというメリットがある。

「ワーケーションなので訪れた人が一定期間滞在しますから、その自治体にお金が落ちます。つまり、その地域独自のスポーツをコンテンツ化してワーケーションすれば、地方創生と働き方改革、二つの社会課題を解決することにも繋がります。ですから、いずれは日本全国でスポーツワーケーションを実施できればいいなと思っています」(佐藤氏)

プロジェクトを担当する、日本総研リサーチ・コンサルティング部門の佐藤俊介氏
プロジェクトを担当する、日本総研リサーチ・コンサルティング部門の佐藤俊介氏

空き家問題の解決にも


ただ、スポーツワーケーションを個人で実施するのは、まだまだ日本では難しい。いきなり来週から野沢温泉村で仕事をしますと言っても、受け入れてくれる職場は少ないだろう。

そこでまずは企業に働き方改革の一環として導入して欲しいと佐藤氏。野沢温泉村では、後継者のいない旅館や空き家などをスポーツワーケーション用にシェアハウスとして利用するといったことも検討しているという。

これは日本全国で問題となっている、空き家問題の解決策にもなるかもしれない。スポーツを通してさまざまな可能性が広がりそうだ。

佐藤氏は実証実験などで野沢温泉村を訪れた際、村の人たちが温かく迎えてくれたことが印象的だったと言う。何度も通ううちに、共同浴場や飲食店で顔見知りになった人と挨拶や世間話をするようになり、まるで自分の故郷にかえってきたような安心感を得ることができたのだそうだ。

そうした、温かな人と人との繋がりもウェルビーイングを高める重要な要素なのかもしれない。野沢温泉村のウェルビーイングビレッジ、今後の展開に注目したい。

文=濱中香織(パラサポWEB) 写真提供=野沢温泉村観光協会/野沢温泉スキー場

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