Netflixが先月から世界市場で配信を開始した『FIFAを暴く』は、その原点と未だに消え去らない疑惑を描いた長編ドキュメンタリーで、欧米では大きな注目を浴びているが、日本では何故かあまり評判は聞こえてこない──。
作品の題材となった「2015年FIFA汚職事件」では、米司法省がジャック・ワーナー元副会長ら14人の幹部、関係者を起訴、うち7人がスイス当局に逮捕され、5度目の再選を果たしたばかりのゼップ・ブラッター前会長が辞任に追い込まれた。
“FIFAの崩壊” が危惧された衝撃のスキャンダルであり、スポーツ界最大の汚職事件と表現されている。
アベランジェ会長とゼップ・ブラッター事務総長、ISL社の出現が転機
FIFA(国際サッカー連盟)は、何十年もの間、常にその倫理性が疑問視されてきた。
例をあげるなら、1982年にアディダスのホルスト・ダスラー氏と電通によって設立されたスポーツマーケティング会社「ISL」と故ジョアン・アベランジェ元会長との疑惑の関係からになろうか。
ゼップ・ブラッター前会長と故ジョアン・アベランジェ元会長(Photo by Mark Leech/Getty Images)
ISLは、IOC(国際オリンピック委員会)、FIFA、IAAF(国際陸上競技連盟、現・世界陸連)といった国際スポーツ組織から放映権等を取得し、それを販売することで利益を得ようと設立され、FIFAの権利もほぼ一手に引き受けていたが、利権にまつわる贈賄などの不法行為が行われていた。電通は95年に全保有株を手放している。そしてIOCとの契約解消などによる経営悪化で、2001年に倒産した。
因みに当時の電通側の事業責任者は、東京五輪招致で国際陸連元会長の故ラミン・ディアク氏への贈賄疑惑を問われ、スポンサー契約を巡る汚職事件で受託収賄罪で起訴されている高橋治之容疑者であった。
その他、ワールドカップの開催国決定に関しても、1978年のアルゼンチン大会以降、FIFA幹部への巨額賄賂事件、嫌疑が絶えなかった。
2022年大会と2018年大会については、放映権セールスのメリットを重視し、2010年に同時に決定されることになった。2018年大会はイギリスが、2022年大会はアメリカが有利と見られていた。
プーチン大統領とゼップ・ブラッターFIFA前会長(Photo by Shaun Botterill/Getty Images)