「良いものをつくる」だけでは限界がある。日本に足りない視点とは

日本の企業が世界に出るときに足りないものは何か。そのひとつが“クリエイティビティ”だとしたら、どうしたら乗り越えていけるのか。

Kitchen & Companyの中道大輔がナビゲートするPodcast「VISION TO THE FUTURE」とForbes JAPANがコラボレート。国内外で活躍する“視点”のあるゲストとともに、考え、発信していく。

11月7日配信は、前回に引き続きTeaRoom代表取締役で裏千家茶道家の岩本涼がゲスト。日本文化の広げ方や価値の付け方、現在の日本の課題などを聞いた。


中道:前回に引き続き、岩本涼さんをお迎えしてお届けします。

現在、Kitchen & Companyでは2つの事業を手掛けています。1つは今までの経験をベースにクライアントのブランディングをサポートする事業。もう1つが自分たちのブランド事業で、そのひとつに緑茶があります。

緑茶ブランドを始めた理由は2つあります。まず、日本には世界から見るともったいないと思われるものがたくさんあるということ。日本人が日本で何気なく消費しているものに、大きなポテンシャルがあるんです。日本から海外に発信するということでも、緑茶は打ってつけでした。

もう一つが、緑茶という日本文化が消滅の危機にあるからです。お茶農家の多くが、その大変さから次世代に継がせたくないと考えていて、ひとつの日本文化がなくなりつつある。絶やさないために、何かやらなければと考えました。

そんな背景から、緑茶だけでなく、その周りも含めた「a | round tea」というブランドを作りました。僕がやりたいことは「a | round tea」をはじめ、日本と世界を繋ぐ接点をつくることであるため、岩本さんが世界でどんなことをしようとしているかに非常に興味があります。


TeaRoom代表取締役で裏千家茶道家の岩本涼

岩本:ありがとうございます。現在私は、日本的な考え方から新しい生活を提案していくことを始めています。

そもそも、日本茶の敵は清涼飲料だと言われていますが、私は全くそんなふうに考えていません。清涼飲料水の歴史を辿ると、茶葉に価値があって飲料に価値がない時代から、茶葉に価値がつかずに飲料に価値がつく時代への変化があります。並行して、都市化と食の西洋化も進みました。

茶葉に価値がなくなった理由は清涼飲料の登場ではなく、よりよい人生を送ろうという価値観の不足だと考えます。1人でマンションにこもる生活を送っていて、ウェルビーイングを感じるかと言えば、そうではないはず。

ということは、共働きで団欒がない家庭や都市化による孤食の増加、サボりと休みが区別されない働き方など、現在の日本における社会課題が一つひとつ解決されなければお茶の需要も生まれないと思います。

そんななかで、私たちは文化の哲学や精神性が社会に浸透することで、新しいお茶の需要を生み出せるのではないかという仮説を持っています。その仮説から、お茶を活用した共創という形で協業先の企業とともに、新たな生活スタイルや人生の歩み方、働き方を提案している段階です。
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文=小谷紘友 編集=鈴木奈央

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