ビジネス

2022.12.14

30年変わらない「呪い」を打ち破れ!多様性を力に変える、これからのリーダーシップ

企業経営におけるダイバーシティ&インクルージョン推進の現在地は。そして、「リーダーシップのあり方」はどのように変化、進化しているのか。


ステークホルダー資本主義、人的資本経営といった企業の経営環境の変化によって、ダイバーシティ(多様性)、イコーリティ(公平性)、インクルージョン(包摂性)といった「DEI」推進の重要性がより一段と高まっている。また、コロナ禍における「大離職時代」という潮流も重なり、企業と個人の関係性も転換期を迎えている。

そんななか、大企業の若手・中堅社員を中心とした企業内有志団体が集うコミュニティ「ONE JAPAN」 は、2022年10月から、女性リーダーシッププログラム「BEYOND by ONE JAPAN」を開始する。同プログラムの運営を行う、若手・中堅社員3人と、講師3人の対話から見えてくる、これからの企業経営、リーダーシップ、個人のあり方とは。

岡島悦子(以下、岡島):私はこれまでに300社以上で経営支援を行い、企業の成長戦略の一環としてDEI推進も支援してきた。3万人近くの方とワークショップなどを行ってきたが、事例で言うと、30年までに取締役・上級管理職の女性比率を50%に高めるという目標を立てているリクルートホールディングスで行っている、28歳の女性社員向けの施策「Career Cafe28」、彼女たちの上司向けの施策「Career Cafe28 Boss」などがある。

変化の激しい時代のなかで、企業は非連続の成長をしなければ生き残れず、その源となるイノベーションを起こすために、多様な視点と多様な経験を意思決定のなかに入れていくこと=DEI推進が重要だという認識は浸透してきている。非連続な成長モデルを創出するために、より加速度的に、さまざまなDEI推進のプログラムを実行し、かつ、データと実例を示して、経営層にダイバーシティ向上による利益実感をもってもらう必要がある。

「なぜ、女性だけなのか」という議論もあるが、企業におけるマイノリティ属性のなかのマジョリティは女性だ。まずはジェンダーから取りかかり、多様な視点や経験を経営に生かすことができるという組織のOSをつくっていくことが必要だからだ。女性活躍推進は、非連続の成長のための「一本目の矢」になる。

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岡島悦子 ◎プロノバ代表取締役社長。ユーグレナ取締役CHRO(非常勤)。丸井グループ、ランサーズ、セプテーニ、ヤプリ、マネーフォワードの社外取締役。三菱商事、ハーバードMBA、マッキンゼー・アンド・カンパニー、グロービス・グループを経て、2007年にプロノバ設立。

濱松誠(以下、濱松):私が共同発起人となって立ち上げたONE JAPANは設立から6年が経過し、現在、55社約3000人が参加するコミュニティになった。これまでも事業開発に挑戦するプログラム「CHANGE」、若手管理職の変革リーダープログラム「ミドル変革塾」などを立ち上げてきた。

一方で、参加メンバーが増えるなか、女性比率は増えないという課題意識があった。男性だから躊躇していた部分はあったが、男性だからできることもあるだろうと。また、「ミレニアル世代やZ世代が集う大企業の有志コミュニティがそれでどうするんだ」という叱咤激励もあり、「BEYOND」プログラムを始めた。

西浜秀美(以下、西浜):アステラス製薬に勤めながら、プログラムのプロジェクトリーダーをしている。社会人14年目だ。転機になったのは、英国勤務時代。組織、チームとして「違い」を認めてうまく生かし成果を出すスタイルをはじめて経験した。

「こういうリーダーであらねば」という固定観念もなく、自分らしさ、個を尊重する環境で自分自身も充実して働け、このスタイルこそ、企業が変革・成長していくうえで必要なことだと実体験できた。この原体験をもとに、自社だけでなく、企業横断で取り組み、日本企業全体を変えていければと思い、プロジェクトを開始した。
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文=Forbes JAPAN編集部 写真=​​若原瑞昌

この記事は 「Forbes JAPAN No.099 2022年11月号(2022/9/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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