ビジネス

2022.12.14

30年変わらない「呪い」を打ち破れ!多様性を力に変える、これからのリーダーシップ


岡島:最近ようやく言語化できてきたが、ジェンダー差は、生理的な男女差ではなく、「育てられ方」という後天的な問題が大きいのではないか。性別による社会的期待・役割を担っていることに起因している。例えば、女性は「協調性をもちなさい」、男性は「勉強でもスポーツでもナンバーワンを目指しなさい」、ということを親や学校、友人、社会から言われることが多い。

そのため、男性は「会社に入ったら昇格しなければならない」という呪いにかけられているし、女性も「悪目立ちして嫌われたらダメだ」という呪いをかけられている。たまたま巡り合わせで、いい上司に当たれば呪いは解けるかもしれない。ただ、そうでないと、アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)のなかで、刷り込まれた呪いから解放できない。

男性側は「早く昇格しなければならない」という呪いのなかで、同じいす取りゲームのいすを女性にもっていかれるのは「ずるい」と思っている。こうした構造は、多様な視点を経営に生かし非連続の成長を創出するというDEIの本質的な意義から大きく外れている。DEIは「パイの取り合いではなく、パイを広げる話だ」としっかり伝えていかないといけない。

西浜:先輩方がジェンダー問題や女性リーダーシップ問題に取り組まれてきたことは知っている。個社では取り組みが進んでいる企業はあるが、日本企業全体としては進んでいない。変わらない理由は、経営者のマインド、実践者の数、制度だと思っているが、なぜ30年間変わらなかったのか。

篠田:大きな要因は、岡島さんとも重複するが、男性、女性の「こういう仕事をすべき」という、社会的な役割意識のアンコンシャス・バイアスの脱却に着手してこなかったことだ。政策や企業の人事制度は進み、男性の育休制度の経済的な手当を含めた充実度は世界でも有数だ。それでも取得する人がものすごく少ない。結局、外側からできることは手を打ち尽くしている。一方、一人ひとりの内面、価値観に働きかけていく努力が少なかった。

この問題は、日本の企業社会が、男女以前に、同質性を力に変えるOSで動いてきたことに起因するのではないか。いまは、均一性を力にするのではなく、多様性を力に変えるというまったく違うOSに乗り換えようとしている。そういう認識がないまま、とりあえず「女性頑張れ」だった。

私自身もそうだが、仕事は頑張りたいと思う一方で、社会的に女性に期待されている家庭運営、家事・掃除上手などのスタンダードに達していないと思うと女性として欠けていると思ってしまう。その葛藤が無意識のうちに、ちょっとしたところでブレーキになるのかと。個人の内面にある葛藤、男女の役割についてのアンコンシャス・バイアス、組織のOSといったこの複雑さをみなが理解すれば突破できるのではないか。

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西浜秀美◎アステラス製薬経営企画部。有志団体「A2」共同代表。2008年アステラス製薬に入社。事業開発、New Product Planningを経て、現在はグローバル製品の価値評価を担当。「BEYOND」プログラムのプロジェクトリーダー。
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文=Forbes JAPAN編集部 写真=​​若原瑞昌

この記事は 「Forbes JAPAN No.099 2022年11月号(2022/9/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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