ビジネス

2022.12.14

30年変わらない「呪い」を打ち破れ!多様性を力に変える、これからのリーダーシップ


大橋沙彩(以下、大橋):私自身、昨年12月から4月末まで産育休を取得し、復職した時点でプログラム運営に声をかけてもらった。10年前にJTに入社した頃から社内でもD&I推進がはじまっていた。当時、私は、周囲の期待に応えたいという思いがとりわけ強く、女性活躍やリーダーになることに対して「もやもや」とした感情を抱えながらも、求められているのであれば、と考え、ある社内発表会で「私はリーダーになる」と宣言した。

周囲からは褒められたものの、同時に後ろめたさも感じた。他部署の女性管理職から「あなた無理していない?」と声をかけられ、その瞬間、「わかってくれる人がいた」と大号泣した。それ以来、吹っ切れて、「私らしくリーダーを目指してみよう」と思えるようになり、そのことでたくさんの機会や人に出会うことができた。過去の私と同じ課題を抱える仲間と少しずつ現状を変えていきたいと思い、事務局に参加している。

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濱松誠◎ONE JAPAN共同発起人・共同代表。2006年、パナソニックに入社し、12年有志の会「One Panasonic」を立ち上げ、16年「ONE JAPAN」を設立。18年に同社を退職し、現在は企業の人材・組織開発やコミュニティ支援等を行なっている。「BEYOND」プログラムのプロジェクトオーナー。

アンコンシャス・バイアスの「呪い」


笹原優子(以下、笹原):私はNTTドコモ・ベンチャーズのCEOを務めているが、ここまで男女というのを意識せずにきた。それは上司のおかげだと思っている。1995年にドコモに入社以来、上司は「あなたは何がしたいのか」と問い続けてくれた。男性、女性ではなく、笹原優子として扱ってもらい、「会社は楽しい」と思って過ごすことができた。

「こういうリーダーであらねば」という理想を考えることは多いが、「どう自分のままでいられるか」「どう考えているの」とかを聞いてもらえる場は意外に少ない。このプログラムでは、そうしたことを問い、引き出していけたら。

篠田真貴子(以下、篠田):私は社会人になって30年強だが、自分が20代のころは総合職の女性も少なく、軋轢が生まれるのもしょうがないと思っていた。ただ、そこから30年経過し、いまの20代女性と話をしても、直面している課題や葛藤は当時の私と変わらない。

また、私が在籍したビジネススクールの同窓生との会合でも、大企業やスタートアップに勤める30代女性の皆さんが「女性リーダーは私だけ」と言う。「この30年はなんだったのか」と。制度が整備され、働く意欲をもっている女性が増えているが、価値観や仲間作りなど内面にかかわる働きかけはこれからだ。

今回のプログラムのように、女性、かつ、会社を超えて集まることは意義深い。「個」で闘うのではなく、力を引き上げてくれる「仲間」がいる場で生まれる価値がある。私も岡島さんや笹原さんをはじめとしたネットワークに本当に助けられた。

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篠田真貴子◎エール取締役。日本長期信用銀行(現・新生銀行)、マッキンゼー、ノバルティス、ネスレを経て、2008年にほぼ日に入社。18年11月まで同社取締役CFO。1年のジョブレスを経て、社外人材による1on1を行うスタートアップの同社にて現職。

濱松:ONE JAPANを運営していくなかで、「オポジットサイド(反対側)をいかに巻き込めるか」が鍵になることを実感している。若手・中堅社員コミュニティであれば経営層であり、今回は男性だ。どのように男性の心を動かしていけばいいか。
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文=Forbes JAPAN編集部 写真=​​若原瑞昌

この記事は 「Forbes JAPAN No.099 2022年11月号(2022/9/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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