第一話:研究者から上場企業経営者に 医療スタートアップCEOの一貫した姿勢
第二話:デジタル医療で初上場のサスメド 市場のニーズはどう見極めるべきか
投資家との向き合い方
──ファイナンスについて、過去を振り返って重要だったポイントがあればお聞かせください。ディープテック企業ならではのポイントですが、足の長い事業をどうやって投資家に理解いただくかが重要です。
いわゆるSaaSのような事業KPI予測が精緻にできるビジネスモデルではありませんし、治験を実施するにはそれなりに赤字を掘っていく必要があります。
この事業構造において早期に収益化を求められてしまうと、本来狙うべき大きなマーケットにアクセスできなくなってしまいますので、いかに事前に長期的なビジョンに賛同いただけるかがポイントになります。
──定量的には示しづらい部分かと思います。
定量的に完全に証明しきれない以上、いかに定性的なロジックをクリアにできるかが重要です。
明確な課題があって、その課題がDTx(デジタル医療)という手段であれば解決できる、DTxでしか解決できないこと。
開発パイプラインの選び方とも通じますが、「Nice-to-haveではなくPainkillerであること」を示すことが、投資家にとっても判断基準になるのだと思います。
──出資後に、投資家とのコミュニケーションで気をつけられているポイントはありますか?
やはりDTxは新しい領域なので投資家の方々も関わり方を試行錯誤されている部分があります。
なので双方、色々とトライできる関係性が重要です。例えばエンジニアの紹介にしても、DTxや医療機器システムを作るうえでどのような人材が適しているのかは、継続的にコミュニケーションさせていただきながら軌道修正してきました。
──上場後にIR面で変わったことがあればお聞かせください。
DTx銘柄としては私たちが初めての上場ケースであったこともあり、単なるコンシューマーアプリとして見られたり、非常にリスクの高いバイオベンチャーのように見られてしまったりと、そもそものDTxについての丁寧な事業説明が必要な状況でした。
単なるアプリではなく、医療のいちプロダクトであること。治験が完了して承認申請している医療手段であること。シンプルにこのことを繰り返しご説明してきました。
上場した後に市況全体が崩れてしまった影響で当社の企業価値も引きずられた部分はありました。ですが上場から1年経ち、ようやく事業理解が進んできていることを実感しています。