ビジネス

2022.12.12

研究者から上場企業経営者に 医療スタートアップCEOの一貫した姿勢

サスメド代表取締役社長の上野太郎

「SUStainable MEDicine」を冠した社名の通り、ICTの活⽤で「持続可能な医療」を⽬指すサスメド。デジタル医療プラットフォームを活⽤した「治療⽤アプリ開発」「臨床試験⽀援」を軸に急成長を遂げ、2021年には上場も果たした。

同社の上野太郎(うえのたろう)代表取締役社長に、起業家の素養、事業成長のポイントなどについてDIMENSIONビジネスプロデューサーの下平将人が聞いた。(全3話中1話)


「研究者」と「起業家」に通ずる素養


──上野さんが考える起業家にとって重要な素養を挙げるとすると何でしょうか?

「前例を疑う」こと。既存のやり方ではなく、本来的にあるべき姿を追求する姿勢です。

これは研究者のマインドと近い部分があると思っています。研究者も、今までにない研究を行なうことにバリューがある。なので医師として研究してきた私のバックグラウンドが、起業においても役に立っている部分だと感じています。

もう1つ挙げるとすると「社会課題」に立脚すること。

社会課題から始まるソリューションだからこそ、事業として社会的に意味がある。社会課題を解決する方法としての起業、というのは今後ますます重要になるだろうと思っています。

──医師がスタートアップを起業されるケースは稀かと思います。上野さんが起業するに至った経緯をお聞かせください。

私は精神科医としてのバックグラウンドがあり、精神科の中でも睡眠障害を専門として研究してきました。

その臨床現場では「睡眠薬の過剰処方」という大きな問題があります。睡眠薬は依存症などの観点からあまり良くないと言われながらも、医療現場も忙しいのでその代わりとなる非薬物療法を時間をかけて提供することができていません。

そんな課題に直面した時に、アプリを通じてなら課題解決ができるのではないかと思い、最初は合同会社という形で会社を立ち上げました。私自身、過去に眠気テストアプリや問診アプリを自作した経験があり、しっかりとしたエンジニアであればアプリを通じた治療法を作れるんじゃないかと考えたのです。

起業を最初から志していたわけではありませんでしたが、目の前の患者を治療するだけでなく、スケールする形で新しい医療を作りたい、という思いは研究者としても持っていました。

手段が「研究」か「起業」かの違いはあれど、目的は変わっていません。

弊社はビジョンとして「持続可能な医療」を掲げています。この目的も「皆保険制度がこのまま永続するとは思えない」といった、同世代の医師ならば誰もが感じている課題です。

たしかに起業して課題解決しようと思い立つところは独特かもしれませんが、目的意識は医師として極めて一般的な考えから始まっています。

「既存のやり方がベストなのか」


──起業してから上場企業の社長へと立場が変わっていくなかで、経営者としての素養を進化させるために意識されているポイントなどがあればお聞かせください。

私は元来は医師で、起業や経営を学んでこなかった人間です。そのため、起業してからずっと学ばせていただいている、今も学び続けている感覚です。

一方で何事においても「既存のやり方が本当にベストなのか」という部分は一度疑ってかかりたいといつも意識しています。

加えて大切にしていることは「前例を疑う」という姿勢です。前例とされるものには何かしら理由があるわけですが、その前例の理念を理解したうえで、踏襲するのか、不合理だと思って違う形を提案するのか。この姿勢は研究や事業、あらゆることにおいて成長し続ける上で大切だと思っています。
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文=下平将人 提供元=DIMENSION NOTE by DIMENSION, Inc. 編集=露原直人

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